違法なギャンブルに多くの人が気軽に手を染めている深刻な実態が明らかになった。犯罪であるという啓発と業者の取り締まりを強化しなくてはならない。
オンラインカジノに関し、警察庁は国内約2万7千人を対象とした初めての調査の結果を公表した。経験者は3・5%で、実際の人口に換算すると約337万人と推計されることが分かった。
オンラインカジノは、スマートフォンやパソコンから現金や暗号資産を投じてスロットやバカラなどができ、プロスポーツの勝敗に賭けるものもある。主に海外事業者が運営し、大半は賭博が合法の国で許可を得ている。
日本からアクセスして賭ければ刑法の賭博罪に該当する。
しかし調査対象の40サイト中、35サイトは日本からの利用を明確に禁止する記載はなかった。
調査では、未経験者を含め違法性の認識がない人が多くいることも浮き彫りになった。
ゲーム感覚で始めた人もいるに違いない。2024年は暫定値で279人の利用者が摘発され、前年の2・6倍で過去最多だった。
今年に入り、卓球男子の元日本代表が書類送検され、人気芸人やプロ野球選手らの利用も確認された。水面下での広がりが心配だ。
オンラインのギャンブルは時間や場所を選ばずにできるため、依存症につながりやすいという。
調査では経験者の60%に依存症の自覚があった。早急に違法性を周知することが欠かせない。
政府は新たな「ギャンブル依存症対策推進基本計画」を閣議決定した。若者への教育・啓発に力を入れる。家庭や学校などでもしっかりと注意喚起せねばならない。
利用拡大を防ぐには客だけでなく「元を絶つ手だて」も重要だ。
計画では運営に関与する業者らの摘発を進め、通信事業者には広告表示や紹介サイトの開設を禁止するなどの適切な対応を働きかける。クレジットカード会社には、賭け金などの決済に使われないよう、注意喚起や要請を行う。
交流サイト(SNS)などで違法サイトを紹介し運営側から報酬を得る「アフィリエイター」も賭博ほう助に当たる可能性があるとして取り締まりの強化を図る。
一方、収益を得る胴元の取り締まりには壁がある。多くは海外で合法的に運営されており、日本で罪に問うことは難しいという。
総務省はサイトへの接続を遮断する「ブロッキング」といった対策の検討を始める方針だ。
現在、競馬など公営競技でも売り上げの8~9割はインターネット投票となっている。基本計画では、本人や家族が望む場合にネット投票の利用停止といった「アクセス制限」の活用も促進する。
国を挙げて実効性ある法整備を急ぎ、賭博にのめり込むことがない社会をつくっていくべきだ。