効率的に生産できて無駄がなく、コストも抑えられる。環境に優しく、子どもたちの教育にも役立ち、その上おいしい。いいことずくめ過ぎて、本当かなと思ってしまう野菜がある。アスパラ菜だ

▼「本当にいいことばかりですよ」と、妙高市の農業法人「米(まい)ファーム斐太(ひだ)」の阿部剛さんは力説する。上越地域では冬の特産野菜として、JAえちご上越を中心にブランド化を目指している

▼稲の育苗ハウスを活用して冬季に栽培するから、専用の施設はいらない。特長の甘みを引き出すには寒さが肝心で、同じハウス栽培でもイチゴなどと違って暖房の必要がない。肥料には牛ふんを使うので、環境面でも優れている

▼2年前には地元の新井中央小学校の給食食材に使われた。以前は市場に出荷する際に長さをそろえるため、茎や葉を切り落として捨てていた。それを知った栄養教諭が無駄なく使おうと、ご飯に混ぜ込むなどのレシピを考えた。一連のメニューは、地場食材を使った献立のアイデアを競う「全国学校給食甲子園」決勝大会で優勝した

▼子どもたちは地元で生産されたアスパラ菜を使った給食を味わいながら、農産物の廃棄についても考えた。阿部さんは「持続可能な開発目標(SDGs)」を学ぶことにも役立っていると胸を張る

▼阿部さんのハウスでは、この野菜のシーズンが終わり、苗作りの準備が進む。コメは難局続きだが、アスパラ菜の「いいことずくめ」に少しでもあやかれれば…。そんなことも夢想する春である。

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