新潟市北区の福島潟では、間もなく菜の花が見頃を迎える。湖畔の公園にある水の駅「ビュー福島潟」の周辺から潟の方面を望むと、黄色いじゅうたんが視界いっぱいに広がるはずだ
▼けれど、そんな景色は違ったものだったかもしれない。当初はビュー福島潟のそばに治水用の堤防が築かれる予定だった。そうなれば潟方面の視界が遮られる。景観を考慮し、堤防を潟の方へずらして勾配も緩やかにすることで視界を確保できるようにした
▼福島潟はかつて食糧増産のために干拓が繰り返されたが、洪水時に水をためる治水機能が見直され、潟の一部は残された。近年は放水路を充実させたほか、治水機能の向上や環境保全のために潟を復元する取り組みも進んだ
▼潟の水門も景観に配慮した形状にしようと、専門家や地元関係者も交えて検討した。「一連の治水事業は画期的だった」。新潟大名誉教授で河川工学が専門の大熊孝さん(82)は、こう評価する
▼昨今は災害が激甚化し、ダムなどのハード整備だけでは限界があると指摘される。このため、農地に遊水池を整備したり、行政と住民が水害リスク情報を共有したりして、総合的に被害を軽減する考え方が主流になってきた。大熊さんによると、県内の治水事業は福島潟以外にもこうした手法を先取りしたケースが多いという
▼住民も行政任せでなく、主体的に防災に関わる姿勢が求められる。菜の花が満開になったら福島潟を訪れたい。水との関わり方を改めて考えてみようと思う。