心が痛む25年前の話である。亀田町(現新潟市江南区)で2人暮らしの70代の夫婦が無理心中を図り、この世を去った。寝たきりの妻を夫が自宅で世話していた。「自分で面倒をみられる」「自分さえ頑張ればなんとかなる」。夫は周囲に話していたものの、部屋からは「病に負けた」と走り書きのメモが見つかった
▼偶然ではないだろう。2人が命を絶ったこの日、2000年4月1日、「介護の社会化」を掲げて介護保険制度の運用が始まった。大正生まれの夫は、人に頼ることをよしとしなかったのか
▼四半世紀を経て制度は社会に根付いた。県内の要介護認定者は10万人を超える。今年で団塊の世代が全て75歳以上になる。介護需要はさらに高まるだろう。一方で保険料はスタート時の2倍以上に膨らんだ
▼社会学者の上野千鶴子さんは制度の25年を「改悪に次ぐ改悪」と年初の本紙で振り返っていた。サービスの切り下げと利用者負担の増加。昨年の訪問介護の報酬改定も、現場に大きな影響を及ぼした
▼それでも上野さんは制度に70点を付けた。「制度がない時代には戻れない。国民の多くは確実に恩恵を受けている」。なにより、それまでの“家庭内強制労働”の解消を目指す“家族革命”だったと位置づけている
▼かつて介護は家族で担うのが当たり前とされ、主に女性、中でも長男の嫁に偏る負担は重かった。たくさんの忍従と嘆息、あの日の夫婦のような悲劇を繰り返して今がある。将来につながる今でもある。まだ70点。