4月よ、4月はいったい、自分でどうしたらよいのか分からないでいるのだ-。ドイツにはそんなふうに歌う童謡があるという。驚くような陽気に包まれたかと思えば、季節を巻き戻す寒風が吹く。日本には「春に三日の晴れなし」の言い習わしもある。さて、暖房用の灯油を買い足そうか、足すまいか

▼4日は二十四節気の「清明」だった。冬の名残の清涼と夏の光の明るさが同居する時季なのだと、それらしい顔をして信濃川のほとりで空気を吸い込んでみた。温暖化が進めばいずれ、二十四節気も意味をなさなくなるやもしれぬ

▼4月は落ち着かない時季でもある。週が明ければ各地の学校で新1年生が入学式を迎える。喜ばしい門出であっても、期待一色の子たちばかりではないだろう。新たな環境で自分の居場所を築いていくのはストレスでもある

▼それなりに年輪を刻んだ大人でも、新年度は居心地の悪さを感じるもの。職場の顔ぶれが変われば気疲れもする。担当が変わったり、責任が増したり。ああ、しんど…。心の中でささやく

▼「春の伸び率」という言葉を知った。この時分の気温と日脚の伸びを指す。厳しい冬を越えた北国は春の訪れが遅い代わりに、暖かくなり明るくなるテンポが猛烈に速いと、気象エッセイストの倉嶋厚さんが書いていた

▼威勢よく「春の爆発」と呼ぶ人もいる。励みになるだろうか。しばらくは清明なる心持ちには程遠くても、来るときが来れば。暴発せぬよう、焦らずに、やるべきことをやる。

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