国会近くの図書館は、普通の図書館と違った。とにかく人が多い。ありとあらゆる本が置いてあり、どんなに難しい探し物でもそこに答えがありそうだ

▼国会図書館を名乗るが、誰が使ってもいい。もちろん議員も使う。首相も先ごろ利用した。1時間余り滞在したらしい。すると身内である自民党内から厳しい反応が漏れた。「のんきだ」と。確かに苦しい国会運営のさなかだ

▼いまの国会は、与党の思いのままには進まない。野党の顔色をうかがう日々がまだまだ続く。自民党内には相当なイライラが募っているに違いない。静かな図書館に座らず、もっとがむしゃらに国会対応に当たってくれ、とトップに言いたくもなるのだろう

▼石破茂首相は「本の虫」と呼ばれるほど読書を愛する。少数与党の悲哀が身に染みて、首相自ら難局打破のヒントを探しに図書館に行ったのか、それとも現実逃避の時間だったのかは分からない

▼国会図書館の目立つところに刻まれた言葉がある。「真理がわれらを自由にする」。軍が情報を独占し、国民が思うように真実を知ることができなかったことの反省を踏まえた言葉だと聞く。そして国民の代表である国会議員が存分に情報に触れることができるよう国会図書館は設けられた

▼その趣旨からすれば首相が訪ねることは好ましいことだ。何が正しい道であるか、本の山に答えを探し、ひたすらに真理を追う。首相は真理を見つけたろうか。何の本を開いたのかだけでも、ちょっと聞いてみたくなる。

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