「雪割草が見たい」と県外から訪ねて来た母とその友人を柏崎市の「大崎雪割草の里」に案内した。冷たい風が吹き付ける日だったが、ちょうど満開を迎えていた。小さな花の愛らしさと色の豊富さに、初めて見るという母たちも感嘆の声を上げた
▼雪割草だけでなく、ショウジョウバカマやキクザキイチゲも見頃だった。看板はあるのに見つけにくいものもあり、じっと目をこらして探す時間もまた楽しい。最近は花の写真を撮るだけで、その名前を教えてくれるスマホアプリもある。新しく山野草の名前をいくつも覚えた
▼寒暖を繰り返しながらも、季節は着実に進み、春の里山は装いを変えていく。雪割草は見頃を終えても、入れ替わるように多様な山野草が花開く
▼長岡市の雪国植物園はホームページで開花情報を毎週更新している。ここに来て「咲いている花」の欄に載る種類が一気に増えた。カタクリやシラネアオイ、ナガハシスミレなどの名前を見るだけで心が弾む。次は母とは見られなかった花を探しに出かけてみようか
▼新年度になり、新しい学校や職場での生活が始まった人も多いだろう。慣れない生活や仕事で、下を向きたくなる日もあるかもしれない。足踏みをしている自分にいらだつこともあるだろう
▼そんなときは時間を作って里山に出かけてみてはどうだろうか。スタスタと歩くばかりでは味気ない。下を向かなければ出合えない花がある。視線の先で風に揺れるけなげな花が、少し心を軽くしてくれるはずだ。