自由で開かれた貿易体制は、米国によってほごにされた。各国は協調して保護主義の連鎖を食い止めなければならない。
経済の混乱から国民の暮らしを守るため、政府だけでなく自治体にも柔軟な対応が求められよう。
トランプ米政権が国別の貿易赤字を参考に独自に設けた「相互関税」の第2弾が発動した。10%の一律関税に続く措置だ。
貿易が不均衡だと見なす約60の国と地域に税率を上乗せし、日本は計24%となる。政府には、高関税の減免に向けた交渉に力を尽くしてもらいたい。
相互関税導入の発表後、世界の株式市場では、景気後退が現実味を帯び、株価が記録的な乱高下を繰り返している。
しかし、トランプ大統領は関税措置の休止は「考えていない」と明言した。
さらに、引き上げの姿勢を強め、医薬品への大規模な関税の導入を近く発表するとしている。
中国が米国への報復措置を撤回しなかったため、米国は中国からの輸入品に課す関税を計104%に引き上げた。異例の高水準である。中国は反発し、さらなる対抗措置を取る構えだ。
報復の応酬は、貿易戦争の様相を呈する。保護主義の高まりによる経済対立が第2次大戦につながったことを忘れるべきではない。
米中両国だけでなく、世界経済を冷え込ませる恐れもある。個人消費の低迷や、企業による設備投資の延期を招きかねない。
リーマン・ショックや新型コロナウイルス禍に相当する影響が出るとの予測もある。警戒を強めなければならない。
本県の輸出企業にとって、米国は中国、韓国、台湾に次ぐ4番目の相手先だ。米国向けの品目である機械機器、金属品、化学品、食料品関連の企業はもちろん、地域経済全体が大きな打撃を受ける事態も想定される。
米国による相互関税について、県内の経済界からは「着地点が見えない」「負の連鎖が心配」といった困惑の声が上がっている。
また、米国は相互関税の交渉で農産物の市場開放を協議する意向で、コメの輸入枠が焦点になる見込みだ。本県など農業県への影響は甚大だ。交渉の行方を注視する必要がある。
本県と新潟市のほか、東京都や福井県などは、独自に相談窓口を設置し、対策に乗り出した。
花角英世知事は本県への影響について「どの程度出るのか、どういう形で出てくるのか、しっかり見ていく」と述べた。
国だけではなく、より身近な存在である自治体にも、企業や農家の下支えに努めてもらいたい。
経済が落ち着きを取り戻すには相当の時間がかかるだろう。それまでの間、国民の不安に耳を傾け、支える姿勢が欠かせない。