春の花便りがあちこちから届くようになった。上越市の高田城址(じょうし)公園の桜も満開を迎え、多くの観光客らでにぎわっている
▼高田の観桜会はことし節目の第100回。公園の桜は旧陸軍第13師団の入城を祝い、2200本の桜を植樹したのが始まりだ。今は周辺も含め約4000本に増え、多くの人が保全活動に取り組んでいる。100年後も桜を残そうと、樹勢回復に努める活動に感謝しつつ堀端を歩く
▼妙高山と桜が一緒にカメラに収まるスポットに向かう。春霞(がすみ)だろうか、花びらの奥の山影はぼんやりしていた。かすんで見える妙高山も悪くない。春霞は春の季語で、微細な水滴やちりが空中に浮遊して、遠方がはっきりと見えない様子を指す
▼たなびく霞とは異なる視界不良もある。少数与党で課題山積の石破政権である。首相が衆院1期生との会食で、手土産として1人10万円分の商品券を配布した問題も尾を引く。物価高で少しでも安い物を求めてスーパーをはしごする国民の感覚とは、あまりにもかけ離れていた
▼4月に入り、ビールや電気料金など、またも多くの値上げが相次いだ。ため息が出る。追い打ちをかけたのが、トランプ米政権による一方的な「相互関税」の発動である。国内外で株価は乱高下した
▼対応の渦中、第2弾の上乗せ分は発動を90日間停止すると突然の発表があった。今後も翻弄(ほんろう)されるのだろう。世界経済の先行きは見通せず、暮らしの不透明感は増している。こちらはくっきりと見える展望がほしい。