何をしても、うまくいかない。どう工夫を凝らしても思い通りにならない。努力も報われず、不安が徐々に増していく中で、暗雲を消し去る希望の光が見えたことだろう
▼「自分にとってこの1勝は特別」。36歳のベテラン投手は586日ぶりの勝利を手にして、顔をほころばせた。マーくんこと、プロ野球巨人の田中将大投手だ。楽天時代の2013年には24勝0敗という驚異的な成績を挙げた。東日本大震災の被災地を大いに元気づけた球団初のリーグ優勝と日本一は、彼なくしては語れないと言ってもいいほどだ
▼その後、大リーグの名門ヤンキースでも活躍した。21年に楽天に戻ってからは往時の迫力が見られず、昨季は1勝もできなかった。「居場所がない」。かつての大エースが、楽天を去る時に語った言葉はプロの厳しさを知らしめた
▼今シーズンからの新天地、巨人での初勝利は、本人の言葉通り格別の1勝だっただろう。日米通算200勝まであと2勝とした勝ち星は、さらなる上積みも期待させる
▼こちらも長いトンネルだった。わが郷土のチーム、サッカーJ1のアルビレックス新潟が、リーグ戦では昨年9月以来の白星をつかんだ。今季初、樹森大介監督にも初の勝利だ
▼たかが1勝、されど1勝。主将の堀米悠斗選手は「ここが今季のターニングポイントだったと後から言える試合にしたい」と語った。そうなるには今日のホーム戦が大切だ。しっかりと勝ち切って、多くのサポーターとともに上昇気流に乗りたい。