米金利が一気に上がれば、新興国や途上国に投資されていたマネーが米国に集中し、世界経済が混乱する恐れがある。

 円安ドル高が進み、輸入価格が高騰する日本への影響も懸念される。注視しなくてはならない。

 猛烈なインフレに対処するため、米国が金融引き締めを加速させた。米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)が、主要政策金利の誘導目標を0・5%引き上げることを決めた。

 ゼロ金利政策を解除した3月の決定に続く引き締め措置だが、通常の2倍という大幅な利上げは22年ぶりとなる。

 もう一つの引き締め策は国債などの保有資産を縮小することだ。

 量的緩和で大量の資金を市場に供給するために購入した資産は、約1160兆円に膨れ上がった。これを6月から毎月上限額を決めて減らしていく。

 金利と量という二重の金融引き締めは異例の発動だ。FRBの強い姿勢がうかがえる。

 背景には、3月の米消費者物価指数が前年同月と比べ8・5%も上昇し、およそ40年ぶりの伸びになったことがある。

 記録的なインフレは、ウイルス禍で景気後退に陥った米経済がワクチンの普及などで急回復し、モノや労働力の供給が需要に間に合わない状況になったためだ。

 ただ、0・5%という急激な金利の上昇は個人消費を鈍らせ、企業の投資意欲をそぎかねない。住宅市場が冷え込めば米国内の景気悪化を招くかもしれない。

 会見で、FRBのパウエル議長は「家計や企業の財務状況は良く、労働市場はとても力強い」と述べ、米経済は引き締めに十分対応できるとの認識を示した。

 景気減速の恐れよりインフレ退治を優先させたのだろう。過度の物価高は企業収益を圧迫し、経済成長を阻害する恐れがある。

 留意したいのは、インフレの一因にはロシアのウクライナ侵攻に伴う食料、エネルギー価格の高騰があることだ。金融政策だけでは物価を抑え込めない。

 米国の金融政策変更は世界経済を動かす。FRBは他国の景気や市場動向を注視しつつ、慎重に対応してほしい。

 日本では、日銀が4月末に大規模金融緩和策の維持を決めた。金利抑制のため、10年物国債を無制限に買う「指し値オペ」を毎営業日実施する方針も決めた。

 米国と日本の金利差拡大を背景に、年明け以降の為替市場では約15円もの円安ドル高が進行した。

 政府は物価高緊急対策を決めたが、円安対策は対症療法的な内容にとどまり、政府・日銀による市場介入の効果にも限度がある。

 円安を阻止するためには、短期的な対策とともに、長期的な取り組みとして日本経済の構造改革を急がなくてはいけない。