強盗や特殊詐欺、悪質リフォームなど幅広い犯罪を引き起こし、社会に不安を広げている。ネット空間の闇の解明を進め、犯罪を根元から断たなければならない。
交流サイト(SNS)などで実行役を募り、犯罪を繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ」(匿流)について、警察庁は2024年の摘発統計をまとめた。通年では初の統計となる。
資金獲得を目的とした犯罪で摘発されたメンバーは1万105人に上る。半数を超える5203人が詐欺や窃盗、薬物事犯など警察庁が示す主な5罪種に関わり、約3割はSNSの闇バイト募集を通じて犯行に加わっていた。
新潟県警が摘発した140人をみても、約半数の68人がきっかけはSNSとしていた。
24年6月に新潟市中央区の貴金属などの買い取り専門店で強盗未遂事件を起こし、有罪判決を受けた20代の男も、SNSで闇バイトに応募していた。
身近なSNSが犯罪への入り口にもなっている実態を、改めて深く認識させられる。私たちは犯罪に加担することがないように、警戒心を持たねばならない。
注視すべきは、主な5罪種で摘発されたうち9割近くを実行役が占め、主犯・指示役は1割程度にとどまることだ。
首謀者は自身に捜査が及ばないように、匿名性の高い通信アプリなどで連絡を取り合い、実行役は使い捨てにされる。犯罪ごとに離合集散し、必ずしもメンバーは固定されていない。
警察幹部は「構成員がはっきりしている暴力団と違い、メンバー間でも顔や本名を知らないことがある」と指摘する。
暴力団と密接な関係にあるケースも報告されている。被害の広がりを防ぐために、首謀者の摘発が急務となる。
実行役の摘発から主犯格をたどるには従来型の捜査だけでは難しい。新たな手法の確立が必要だ。
警察庁は1月、「仮装身分捜査」の実施要領を公表した。
捜査員が架空の身分証で闇バイトに応募し、実行役が集まった場で犯罪を未然に防いだり、指示役の情報を得たりする狙いがある。
刑事や生活安全、組織犯罪対策などの部門や、都道府県警の垣根を越えて情報を集約し、合同捜査態勢を組む方針も掲げている。
本県でも県警が今春、匿流やその資金源とされる特殊詐欺に対応する人員を増やした。
対策を重ね、首謀者に迫る突破口を見いだしてもらいたい。
高額報酬にひかれ、闇バイトに安易に応募した例が若者を中心に報告されている。結果的に匿流の暗躍を支えかねない。
警察と教育現場などが連携し、啓発を強化することも必要だ。匿流撲滅に向けて社会全体で意識を高めていきたい。