3日間の議論を経てどのような結論を出すか注目される。利点と課題を整理し、署名した14万3千人超をはじめ、県民が納得できる熟議を尽くさなければならない。
県議は会派の論理に縛られることなく、地元の有権者の負託を得ていることを意識して論戦に臨んでほしい。
東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を審議する県議会臨時会が16日、開会する。3日間の会期で、条例案や提出が予定される修正案について検討する。
条例案に対し、花角英世知事は明確な賛否を示していない。「再稼働に賛成か反対かの二者択一では県民の多様な意見が把握できない」との意見を付ける方針だ。
公務員の政治的行為を制限した地方公務員法などに抵触する可能性について指摘したほか、開票事務の主体が整理されていないことも問題視した。
これを受け、非自民の無所属議員でつくる第3会派「リベラル新潟」が開票事務などに関する文言を直した修正案を提出する方針を固めている。二者択一については「条例案の根幹部分に当たる」として修正しないという。
県議会は多様な視点を持ち、議論を深めてほしい。
全国では、2011年の東電福島第1原発事故以降、原発を巡る住民投票条例案が本県を含む6都県で審議された。結果はいずれも否決で、13年の新潟県議会では「国策は住民投票になじまない」というのが主な理由だった。
柏崎刈羽原発が立地する柏崎市の桜井雅浩市長も記者会見で「原発に関するものは国の政策であり、住民投票(の対象)として正しくない」などと否定的な考えを明らかにしている。
本当に再稼働問題は住民投票になじまないのかどうか、県議会の論戦に耳を澄ませたい。
原発はひとたび事故が起きれば、多くの人の暮らしと故郷が奪われることは、福島第1原発事故が物語っている。
将来にわたり重大な影響を受けかねない問題に、自ら意思表示をしたいという思いは理解できる。
民意を直接示す手段である住民投票制度には、間接民主制を補完する役割があるだろう。
一方で、柏崎刈羽地域の経済5団体の関係者は知事との面会で「再稼働問題に関する決定は非常に専門的」「(県民投票は)感情的な判断に陥りやすい」と訴えた。
知事は県民の「信を問う」ことも選択肢としながら、具体的な方法には言及していない。県議会は住民の意思を確認するのにふさわしい方法は何なのかについても、質疑を重ねるべきだ。
条例案提出をきっかけに、県民一人一人が、原発問題と向き合い、自分のこととして考える機会にもしていきたい。