減り幅の大きさに驚かざるを得ない。減少を食い止めることに加え、変容する社会にどう対応していくか知恵を出し合いたい。

 総務省が2024年10月1日時点の人口推計を公表した。日本人は1億2029万6千人で、前年同月に比べ89万8千人の減少となった。比較可能な1950年以降で最大の落ち込みだ。

 およそ76万人の新潟市の人口規模を大きく上回る減り幅である。影響の大きさが気がかりだ。

 外国人を含む総人口は、55万人減の1億2380万2千人で、減少が14年続く。少子高齢化が進み、出生数が死亡数を下回る「自然減」が拡大している。

 この傾向が続けば、労働力不足は一層深刻になる。

 共同通信社が主要企業117社に実施した2026年度入社の新卒採用に関するアンケートでは、企業優位の「買い手市場」との認識はわずか1%で、学生優位の「売り手市場」になっているとの回答が80%に上った。

 人手不足は明らかで、経済の縮小が懸念される。

 少子高齢の傾向を直視し、社会のありようを組み立て直さなければならない。

 この4月から仕事と子育ての両立を支援する制度が手厚くなった。看護休暇や残業免除が認められる期間が長くなる。出生率の向上には子育て世代のニーズを踏まえた制度の拡充が必要だ。

 しかし支援が少子化に歯止めをかけるまでには時間がかかる。

 産みたい人を支える制度になっているか、男女が共に子育てに参画できるか、絶えず検証することが求められる。

 働く意欲のある高齢者の就業を促したり、デジタル技術によって省力化したりすることも考えられる。人口減による影響を抑えるため、企業の工夫が問われる。

 今回の推計で増加となったのは東京都と埼玉県だけで、首都圏への集中が改めて明らかになった。

 本県の総人口は、前年同月比2万7千人減の209万9千人で、戦後初めて210万人を割り込んだ。減少率1・29%は、減少した45道府県の中でも大きい。

 子育て支援だけでなく、大都市への流出を防ぎたい。

 県は今後8年間の最上位計画として、花角英世知事が掲げてきた「住んでよし、訪れてよし」を基本理念とする総合計画をまとめた。「人口の定常化(安定化)」を目指すことを盛り込んだ。

 25年度予算で女性の柔軟な働き方を進める事業も創設した。多くの人が暮らしやすさを実感できることが大切だ。

 地域の人が減ることで、公共交通が削られる不安がある。インフラの維持が後回しにされる不安を抱く人もいるだろう。どこに暮らしても切り捨てられることがない新潟県でなければならない。