巨大企業が市場を不当な手段で独占していては、消費者の選択が限られ利益につながらない。公正な競争ができる環境へ向けた当然の措置といえる。
米グーグルがスマートフォン端末メーカーとの契約で自社の検索アプリなどの搭載を不当に求めたとして、公正取引委員会は独占禁止法違反(不公正な取引方法)で、同社に排除措置命令を出した。
公取委は、グーグルに契約内容の変更や同様の行為の禁止を求めた。契約の影響で、他社の検索サービスの参入が難しくなっていると判断した。
グーグルを含む「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業に、公取委が排除命令を出すのは初めてだ。
弁護士など第三者が5年間、改善状況を監視し、報告することも公取委は命じた。
総務省の「情報通信白書」によると、2024年1月時点で、グーグルはスマホ検索サービスで8割超のシェアを持つ。
他社が参入できず市場に競争が生まれなければ、技術革新も止まり、消費者がより良いサービスを受けられなくなる恐れがある。
公取委によると、グーグルは自社の基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載するメーカーとの間で、アプリストア「グーグルプレイ」の搭載を許可する代わりに、自社の検索アプリをホーム画面に配置するよう求めた。
また、他社の検索サービスを搭載しないことを条件に、広告収益の一部を分配する契約を結んだ。
これらは、独禁法が禁じる不公正な取引方法のうち、「拘束条件付き取引」に該当するという。
グーグルは、「日本のスマホメーカーや通信事業者はグーグルとの取引を強制されていない」などとコメントしたが、指摘された行為を早急に取りやめて、改善策を講じなければならない。
グーグルを巡っては、米連邦地裁が、反トラスト法(独禁法)に違反し、インターネット広告の仕組みの一部で不当な独占をしていたとの判決を出した。
欧州連合(EU)でもGAFAによる競争阻害を規制する動きが強まっている。公取委の命令は欧米に足並みをそろえたといえる。
生成人工知能(AI)時代を見据えた対応でもあるだろう。
検索市場では、新興企業が生成AIを取り入れた独自のサービスを次々と打ち出している。
利用者がそれぞれ製品の特徴を比べ、どのアプリをインストールするか、自由に選べるようにしなければならない。
政府はスマホ向けアプリ市場の独占を規制する新法「スマホ特定ソフトウエア競争促進法」を12月までに全面施行する。
今後は独禁法と新法で監視を行うことになる。自由な競争が阻害されることのないよう厳格な運用に努めてもらいたい。