新潟市など県内の平野部は桜の見頃も過ぎた。気温が上がり初夏の装いだが、お忘れなきよう。中山間地では、まだ雪をかぶった農地も少なくない
▼雪解けが進むこの時季、豪雪地には特有の空気がある。正確に言えば、あると信じている。匂いもないので言葉ではうまく言い表せない。陽光が降り注ぐ日に、鼻の奥までスーと入り込み、心も体も浄化されるような気持ちになる
▼少しひんやりとしたその空気と結びつく景色は、雪が消えかけて土が見える田んぼだったり、雪解け水が勢いよく流れる川の岸だったり。水蒸気が多く含まれているのだろうか。マイナスイオンかもしれない。遠い子どもの頃から体に備わるセンサーが反応する。だから懐かしい
▼そんな春の空気をまとう故郷の地を週末に訪ねた。この冬は、何度か雪下ろしで通った。1階の屋根まで届いていた雪の塊は、すっかりしぼんでいた。あの労力は一体何だったのかと、なんだか口惜しくもある
▼残雪の脇でスイセンの芽が顔を出していた。山並みに新緑がもえだすのは間もなくだろう。平野部から周回遅れの桜の開花も味わい深い。至宝の山菜だと確信する木の芽が待ち遠しい。のどかな地域でしか味わえない、ささやかな優越感を覚える
▼先日の本紙窓欄に、津南町の72歳女性の投稿が掲載された。特産である甘い雪下にんじんを生で味わい「体の中に春を取り込んで元気をもらっています」と弾むようにつづっていた。エネルギー充塡(じゅうてん)。また1年、頑張れますね。