料理好きな野ネズミのきょうだいが主人公の絵本「ぐりとぐら」。話自体はおなじみだが、視覚障害者も楽しめる「触る絵本」版には数々の工夫が凝らされている

▼絵には凹凸もある。例えば、ぐりの青い服は縦じまで、ぐらの赤い服は点々で表し、指で触れると2匹が区別できる。点字も添えてあり、障害のある子もない子も一緒に読める

▼こうした「バリアフリー図書」をそろえるのが「りんごの棚」という取り組みだ。スウェーデンの公共図書館で始まり、国内では2013年に埼玉県内の町立図書館にコーナーが設置されて以降、徐々に増えているという

▼新潟市立中央図書館は昨年7月に開設した。4段の棚には「触る絵本」のほか、易しい言葉やピクトグラム(絵文字)で分かりやすく書かれた本など約100冊が並ぶ。大きな文字と見やすい字体を使った大活字本もある

▼手指の障害でページがめくれない人や、活字での読書が苦手な人でも利用しやすくなっている。対面での朗読サービスや、図書の文字を画面上に映し出して見やすくする「拡大読書器」などが用意されている。館長補佐の高橋江里子さんは「本は人生を豊かにする。公共図書館として誰もが読書を楽しめるようにしたい」と話す

▼きょう23日は「子ども読書の日」。子どもに本とより親しんでほしいと制定された。りんごの棚も、本と距離のあった子たちを読書に誘う入り口となるだろう。本好きが一人でも増えるといい。すてきな出合いがありますように。

朗読日報抄とは?