毎年のように被害が出ている。誤って有毒植物を食べたことによる食中毒である。山菜採りが本格化するこの季節、とりわけ注意が必要だ。旬の味覚を楽しもうとしたはずが、暗転してしまう
▼先日は佐渡市の女性がウルイと間違って有毒のコバイケイソウを食べ、吐き気や下痢などの症状を訴えた。ウルイはみずみずしくて、生でも加熱してもおいしく食べられる。けれど花が咲く前の若芽は、ほかの植物と間違えやすいという
▼以前の本紙には、ウルイだと思ってヒメザゼンソウを食べた女性の言葉が載っていた。「あれっ、何か口が変と思った途端に、口とのどにしびれを感じた」。軽症で済んだが、痛みやしびれがしばらく続いた
▼食用植物と間違いやすい有毒植物は多い。ギョウジャニンニクとイヌサフラン、ニラとスイセン、ニリンソウとトリカブト…それぞれ前者が食用、後者が有毒だ。今の時季は見た目が似ており、同じ場所に生えていることもあるため、見分けるのは簡単でない
▼「似て非なる」という言い回しがある。一見すると似ていても内実は異なることを意味する。まがいものを指すこともある。前述の植物は、どれも似て非なる間柄だ
▼親しみのある存在に見えても毒を秘めるものは、ほかにもある。代表例は詐欺だろう。悪人は家族や警察官、恋人のふりをして近づいてくる。植物と同様、見分けるのは難しい。自分だけで判断せず、誰かに相談してみる。これも植物と同じく、対策の第一歩になるのだろうか。