緊迫化する東アジアの平和と繁栄に資するためにも日韓関係の修復を急ぎたい。それにはトップ同士の話し合いが不可欠だ。

 韓国の新大統領に尹錫悦(ユンソンニョル)氏が10日、就任した。保守政権の発足は5年ぶりとなる。

 尹氏は就任演説で、自由民主主義と市場経済体制を基盤に国を再建すると訴えた。西側の価値観を尊重し、北朝鮮や中国、ロシアをけん制したものとみられる。

 内政問題では、貧富の格差拡大や保革の対立など国内の二極化が社会の発展の足を引っ張っているとして、急速な経済成長による解決を目指す考えを示した。

 尹氏は検事一筋の経歴を持つ。1987年の民主化以降、政治経験がない大統領は初めてだ。

 今年3月の大統領選では僅差で勝利し、今も世論の評価は分かれている。国会では少数与党で政権運営は難航が予想される。

 政治基盤の弱い尹氏が国民の支持をどう広げ、政策を実現していくのか。手腕を注視したい。

 尹氏はこれまで、文在寅(ムンジェイン)前政権下で元慰安婦や元徴用工問題を巡り「戦後最悪」と言われるほど冷え込んだ日韓関係の修復に努める考えを示してきた。しかし演説では言及しなかった。

 就任式に出席した林芳正外相との会談では、日韓関係の改善へ協力することで一致した。「早いうちに岸田文雄首相と会うことに期待している」と述べ、日韓首脳会談の早期実現に意欲を示した。

 これに対し、林氏は「元徴用工問題など日韓間の懸案解決が必要だ」などと述べた。

 日本政府は歴史問題に関し、1965年の日韓請求権協定や2015年の慰安婦合意によって解決済みとの立場だ。

 こじれた日韓関係を立て直すには、日本側が求める具体的な解決策を尹新政権側が提示できるかどうかが焦点となる。両首脳は早期に会って率直に話し合い、障害を取り除く努力が求められる。

 東アジアの安全保障は今、大きく揺らいでいる。

 北朝鮮はミサイルの発射実験を繰り返す一方、核実験準備を月内にも完了させる可能性がある。ロシアによるウクライナ侵攻は長期化し、中国は台湾への統一圧力を強めている。

 地域の平和と安定を揺るがしてはならない。日韓が溝を埋められないままでは、強権国家に付け入る隙を与えてしまう。

 米国のバイデン大統領は、今月下旬に韓国、日本を訪問し、それぞれ首脳会談に臨む。こうしたタイミングも捉え、日米韓の連携強化を着実に進めたい。

 横田めぐみさんら北朝鮮による拉致被害者全員の早期帰国は日本の最重要課題だ。この点でも米韓との協力が欠かせない。

 「佐渡島(さど)の金山」(写真)の世界文化遺産推薦の今後も気掛かりだ。韓国側は戦時中に朝鮮半島出身者が強制労働をさせられたとして反対している。

 政府は、佐渡金山について韓国側に丁寧な議論を行っていくとしている。価値をしっかり訴え、理解を広げてほしい。