高速道路で魚沼地方から新潟市に向けて北上すると、車窓から延々と農地を眺めることになる。のどかだが退屈…と思わぬでもないが、その表情は季節によって変化する。敷き詰められた水鏡に反射する日の光。広大な緑のじゅうたんに吹き渡る風。白銀が広がる静ひつな地平。新潟の宝である
▼今の時季も田んぼは日々様相を変える。魚沼地方では田打ちが進むが、長岡に向かって水を張った代かきに移る。蒲原平野ではほぼ田植えを終えた。作業手順が見て取れる。今秋は豊作だろうか。コメに注がれる視線は熱い
▼米価の高止まりが続いている。約31万トンの備蓄米が放出され、さらに追加を予定するが、標準価格に戻る気配がない。卸売業者の段階で滞っているとされる。昨年産米の生産量が、元々政府が把握するほどなかったとみる人もいる
▼それにしても、どこか不可解である。コメがしっかり消費されていれば喜ばしいが、こんなに足りなくなるほどの需要に驚く。値上がりした分が農家収入に直結していないのも、本来はおかしな話である
▼米価対策が今夏の参院選の焦点の一つになるほど注目されるが、コメ作りの現場の実態にこそ目を向けるべきだろう。今回のようなコメ騒動などなくても、2040年には生産者の減少で、国内需要が賄えなくなると試算されている
▼米価への関心が、土にまみれる農家への敬意につながることを願いたい。コメへのニーズがこれほど高いという現実が、農家の誇りを高めてくれるといい。