和平に向けて目立った成果を挙げられなかったのは残念だ。しかし、両国は協議を継続するという。早期に停戦を決断し、実行に移すべきである。
ロシアとウクライナによる直接交渉が3年ぶりにトルコで行われた。これまでで最大規模となる千人対千人の捕虜交換に合意した。
高官級協議は、わずか1時間40分にとどまり、最大の焦点だった停戦合意には至らなかった。
仲介したトルコによると、「両国は再び協議を行うことで原則的に合意した」という。
指導者レベルで早急に再協議が行われるよう、両国はもちろん、国際社会も環境整備に努力してもらいたい。
米通信社の報道によると、直接交渉で、ロシアは停戦条件として、併合宣言したウクライナ東部・南部4州からのウクライナ軍撤退や、4州と南部クリミア半島のロシア領承認を挙げた。
過大な要求をしたのは、停戦期間中にウクライナ軍の戦力が回復することを警戒したためだとみられている。
一方、ウクライナは停戦条件の交渉よりも、即時停戦が先との立場だ。「ロシアから受け入れ難い要求があった」と反発したのは当然だった。
気がかりなのは、ロシアが強硬な姿勢に終始したことである。
英誌によると、ロシアのメジンスキー大統領補佐官は「ロシアはこの先永遠に戦うことができる。この中にも近しい人を失う人がいるかもしれない」と挑発した。
交渉後にはテレビを通じて「戦争と交渉は常に同時に進むものだ」と訴えた。
ウクライナの主張を全面的に否定するばかりでは、対立が深まるだけで、合意に向けた話し合いにならないではないか。
そもそもロシアのプーチン大統領は、米国による30日間の全面的な停戦案を拒否した。
その後、ウクライナに直接交渉の再開を提案したものの、ゼレンスキー大統領の要求した首脳会談は拒んだ。
これでは、ロシアに停戦する意思があるのかどうか、疑念を抱かざるを得ない。
ロシアは戦況で優勢に立っているとされる。停戦が実現しない間に、侵攻がさらに続くことが心配である。直接交渉後にも、ウクライナを無人機で攻撃し、死傷者が出たという。
注目されるのは、停戦実現に意欲を見せるトランプ米大統領の動向である。
ただし、トランプ氏の和平案の内容はウクライナに領土面で譲歩を迫り、ロシアに有利な点が多いとされてきた。
ロシアのウクライナ侵攻は、力による一方的な現状変更であり、国際秩序を否定するものであることを忘れてはならない。