あまりに無神経な発言である。物価高に苦しむ国民の声が聞こえていないのではないか。閣僚としての資質が疑われる。

 自民党の江藤拓農相が、価格高騰が続くコメに関し「(私は)買ったことありません。支援者の方々がたくさん下さるので、(家の食品庫に)売るほどあります」と発言した。

 党佐賀県連の政治資金パーティーで講演した際のもので、「大変なんですよ、コメをもらうというのも」などと言った。

 消費者の神経を逆なでするものだ。生活や生産の厳しい実態に目を向けていれば、出てくるはずのない言葉だろう。

 価格安定化に取り組むべき担当閣僚でありながら、責任感を欠いていると言わざるを得ない。

 批判を受けた江藤氏は、実際にはスーパーなどでコメを購入しているとして「正確性を欠いた」と修正した。

 その後、石破茂首相から厳重注意され、発言を全面撤回し謝罪した。あまりにも言葉が軽い。

 江藤氏は、コメは個人から受け取っており、政治資金規正法で原則禁止された団体からの寄付には当たらないとも強調した。

 首相は20日、「任命権者として責任は痛感している」と謝罪したものの、江藤氏を続投させる意向を明言した。これに対し立憲民主党などの野党は、辞任が必要との認識で一致した。

 高騰に加え、関税交渉でも農政が大事な時である。江藤氏に任せられるのか疑問が残る。

 県内消費者はコメを「やっとのことで買っている」と憤る。政府は、国民の怒りをしっかり受け止めなければならない。

 共同通信が今月実施した世論調査で、コメ価格高騰への政府対応には、87・1%が「不十分だ」と回答した。

 今月5~11日にスーパーの店頭で販売された5キロ当たりの平均価格は4268円と、過去最高値をまたも更新した。

 政府は備蓄米制度を改め、放出のための入札を3月以降、3回実施したが、コメの平均価格は前年同期の2倍程度の高値のままだ。

 江藤氏は2月、「(備蓄米放出で)国の姿勢を示せば、価格も安定していくのではないか」と楽観視していた。見通しが甘かったといえるだろう。

 流通量にも課題がある。農林水産省によると、小売店や外食事業者への4月27日時点の備蓄米流通量は、3月に落札された計2回分の放出の10・55%にとどまった。

 放出した備蓄米が停滞せず広く行き渡るように、流通スピードの加速が欠かせない。

 江藤氏の失言は、生産者の意欲にも水を差した。これでは農政への不信を深めるばかりだ。

 主食の安定供給に向け政府の真剣さが求められる。