任期満了に伴う県知事選が12日、告示され、29日の投開票に向けた選挙戦が始まった。

 ウイルス禍とウクライナ危機で社会や経済が不安定さを増し、多くの人が先行きを見通せずにいる中での選挙戦だ。候補者には、新潟に活力を生み出すような熱い論戦を繰り広げてもらいたい。

 私たちは県の将来を見据え、訴えに耳を傾けて公約を吟味し、大事なリーダーを選び出したい。

 選挙戦は、再選を目指す現職の花角英世氏と、会社役員で新人の片桐奈保美氏の無所属同士による一騎打ちとなった。

 現県政の継続を訴える花角氏に、片桐氏は反原発や県立病院の存続などを掲げて挑む。

 焦点の一つになるのは1期4年の花角県政に対する評価だ。

 花角氏は防災・減災対策の加速や交流人口の拡大を柱に据え、県財政危機やウイルス禍にも対処した。取り組みは十分だったか。

 最大の県政課題と言える人口減少対策では、U・Iターンの促進などに力を入れた。だが、昨年10月1日時点の本県の人口推計は前年より2万4千人、1・10%減少した。いずれも過去最大で、歯止めには程遠い。

 幅広い世代の県民が関心を寄せる問題だ。両氏は明確なビジョンを示してほしい。

 十分な論戦を望みたいのは、原発再稼働問題に対する姿勢だ。

 過去の知事選では常に重要な焦点となってきた問題である。

 さらにロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料価格高騰や原発への武力攻撃があり、世界最大級の東京電力柏崎刈羽原発を抱える本県にとって、再稼働を巡る問題は一層重さを増している。

 柏崎刈羽原発では核物質防護体制の不備が見つかるなど失態が続いた。現時点では再稼働を話題にできる状況ではないものの、次の知事の任期中には再稼働の是非の判断を迫られる可能性がある。

 それだけに、この問題には正面から向き合ってもらいたい。

 花角氏は県独自の「三つの検証」の結果が出るまで議論をしない姿勢を堅持する。将来的に原発に依存しない社会を目指す考えだ。

 片桐氏はウクライナ侵攻で欧州最大の原発が攻撃対象になったことを念頭に、再稼働は認めず、廃炉を目指すと強調している。

 原発事故時の避難や、再生可能エネルギー導入の方向性などを含む幅広い観点で語ってほしい。

 前回の知事選は、国政与党系と野党系による事実上の一騎打ちとなったが、今回は野党系の対応が割れる形となっている。

 その構図が選挙戦にどう影響するか。知事選の次には夏の参院選が控えており、県政界の今後を占うことにもなるだろう。

 知事選を通して私たち県民も地域の課題について見詰め直し、深く考える機会にしたい。