勝つことや記録更新を意識し過ぎて、子どもたちが体を壊すようなことがあってはならない。指導者は子どもの将来を見据えて育ててもらいたい。
小学生世代のスポーツ大会を見直す動きが広がっている。
全日本柔道連盟(全柔連)が毎年夏に開催している個人戦の全国小学生学年別大会を、今年から廃止すると決めた。
日本スポーツ協会もスポーツ少年団が実施するバレーボールやサッカーなどの全国大会について、将来の中止を視野に本年度中に結論を出す方針だ。
どちらも極端な「勝利至上主義」を見直すためだとしている。
全柔連によると、有利な階級に出場できるよう、指導者や保護者が、小学生に10キロもの過度な減量や増量を強いる例があった。体格差の大きい児童が試合する危険性なども指摘されてきた。
発達途上な子どもへの無理な減量は成長に影響を及ぼす恐れがある。勝ちさえすれば何でも許される風潮が根強いとされ、けがの恐れがある無理な体勢からの技を求める指導者もいたという。
日本スポ協は、幼少期に特定の競技に専念することが発育に悪影響を与えることを懸念している。
試合に勝つ喜びは成長の糧になる。全国大会出場を目指し猛練習している子どもは多いだろう。
だが、勝利を意識し過ぎた指導で成長期の大事な体を壊し、力を伸ばせなかったり、競技を断念したりするケースは少なくない。
そうした事態を防ぐためにも将来を見据えた練習や試合方法の意義を、指導者や保護者、子どもたちが共有していくことが重要だ。
子どもたちが自発的に取り組めるように、スポーツの楽しさを教えることを第一にしてほしい。
本県の柔道指導者からは「勝負だけではない。多様なニーズに応えられる指導者が増えている」との指摘が出ている。
こうした動きをさらに広げてもらいたい。
全日本軟式野球連盟は2019年に学童野球での投手の投球数を1日70球以内とした。22年からは七回制を六回制に短縮し、故障予防を目的に改革を進めてきた。
日本バスケットボール協会は18年から全国ミニバスケ大会で、トーナメント制をやめ全チームの試合数を等しくし、優勝チームも決めない「交歓大会」に変更した。
高校野球では、選手の故障を防ぐ観点から、本県の高野連が18年に1試合の1人当たりの投球数上限を100にすると発表したことをきっかけに、1週間で500球の全国ルール策定につながった。
無理をさせず選手を育てる姿勢は、勝利を求められるプロ野球でも注目されている。
ロッテの佐々木朗希投手が4月、史上初の2試合連続完全試合への期待が高まる中、八回を投げ終えたところで降板した。球団側の5年で体をつくり上げ育てるという方針はぶれなかった。
一連の見直しの動きを、子どもたちとスポーツの関わり方を再考する契機としたい。

