1メートルの長さは、ほとんどの人が分かるだろう。とはいえ、定義だけ聞いたらどうか。18世紀に定めた1メートルは、赤道から北極点までの距離の1000万分の1の長さだった
▼1983年にはさらに厳密にしようと、光が真空中を2億9979万2458分の1秒の間に進む距離とした。極めて正確な数値だが、直感的に長さが分かる人がいたら驚きだ
▼一方で人類は古来、直感的に分かる単位を用いて生活をしてきた。その一つが身体尺だ。例えばインチは手の親指の幅が由来で2・54センチ。フィート(フート)は足のサイズが基になり約30センチだ。日本人が使ってきた身体尺も多い。起源は諸説あるが、尺は手を広げた親指から中指までの長さが基準となり、寸はインチと同様に親指の幅に由来する
▼食にまつわる単位は究極の人間基準だ。1反は1人が1年間に食べる米を生産できる面積で、豊臣秀吉の太閤検地で300歩(約1000平方メートル)と定めた。1石は1人が1年間に食べる米の量(1000合)で、10万石の大名なら10万人を養える計算になる
▼重さの単位ポンド(約450グラム)も、大人が1日に食べるパンを作るのに必要な大麦の量だから、人間基準の単位は洋の東西を問わず生活に根付いてきたのだろう。尺度や寸法は今も普通に使われている
▼メートルやグラムなど国際的に統一した単位で正しく計るだけでなく、人に寄り添う基準も大切にしたい。「育ち盛りの子どもには1合を大盛りにするよ」。そんな尺度もあるといい。