軍事同盟への加盟申請は歴史的な大転換だ。北欧2国の決断は極めて重く、実現すれば地政学的なバランスが激変する。
フィンランド、スウェーデンが相次いで北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請する方針を決めた。両国とも軍事非同盟の国是を転換することになる。
NATOは旧ソ連の脅威に対抗するために西側諸国で結成され、現在は30カ国が加盟する。
条約で集団防衛を定め、加盟国が軍事攻撃を受けた場合には全加盟国への攻撃と見なし、武力行使を含む必要な行動を直ちに取ると規定している。
フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相は、共同声明で「加盟はフィンランドの安全を強化する」と強調した。
スウェーデンのアンデション首相は、加盟申請を表明した記者会見で「(フィンランドと)同じ道を行かなければ危険な状況に置かれる」と述べた。
両国の申請は、ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する危機意識の強い表れだ。NATOの集団防衛義務による抑止力への期待があると見ていい。
加盟には全加盟国の合意が必要だ。通常1年程度かかるとされ、今のところトルコが難色を示す。
正式加盟前に攻撃を受けることが懸念されるが、ノルウェー、デンマーク、アイスランドの北欧3カ国は両国を支援する用意があると表明した。英政府も有事の際は軍事支援すると発表した。
これらの動きに反発するロシアのプーチン大統領は、NATOの軍事施設が両国に置かれた場合は「対抗措置を取る」と表明した。お門違いも甚だしい。
両国で慎重だった加盟支持の世論が高まったのはウクライナ侵攻後のことだ。NATOの拡大阻止を狙った侵攻が脅威となった。
フィンランドはロシアと1300キロの国境を接し、第2次大戦中はソ連に2回も侵攻された。戦後はソ連やロシアに侵略の口実を与えないよう腐心し、非同盟主義を導き出した。
スウェーデンは19世紀のナポレオン戦争以降、軍事非同盟と戦争不参加の基本政策を維持してきた。その立場から非核や軍縮の旗振り役を国際社会で務めてきた。
国是の中立政策を転換させたのは侵攻であり、ロシアであるとプーチン氏は認識すべきだ。欧州の安全保障政策が大きな分岐点を迎えることになる。
先進的な軍を持つ両国が加盟すれば、バルト海周辺のNATO防衛力が向上するだろう。
ロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)もNATOとの対決姿勢を鮮明にしている。
ウクライナからロシアを撤退させ、欧州の軍事的な緊張を解かねばならない。そのためにはNATO加盟国は結束する必要がある。
