スーパーの店頭に県内産の梅が並ぶ。梅酒や梅干しを仕込む梅仕事の季節だ。よく作る梅シロップは、へたを取って洗った青梅を氷砂糖と瓶に詰めるだけの手軽さがいい

▼県内産を待ちきれず和歌山県産で仕込んだ瓶では、とろりとした液が日々琥珀(こはく)色を濃くしている。気になるのは、液に浮かぶ実に今年は傷が多いことだ

▼和歌山県では4月にひょうの被害を受けた。被害は約48億円と過去10年で最悪の規模に上る。産地は昨年もひょうと暖冬で、記録的な不作に見舞われた。2年連続の被害に、生産者の落胆はいかほどか

▼毎年、和歌山の農家から昔ながらの梅干しを購入している。この農家の梅も9割に被害が出たという。「数日間放心状態だった」。サイトに、こう記していた。昨年の不作で、既に梅干しの原料の不足や値上がりが始まっている。農家は、このままでは国産梅が敬遠されないかという不安もつづっていた

▼だが、ここからが力強い。傷のある実も使えるおやつや調味料の開発に向け、クラウドファンディングで資金調達を始めた。今年の被害に対応するだけでなく将来の気候変動にも備えるという。「強い梅産地をつくる」との訴えに応援が広がり、募金は現在約3600万円と目標を超えた

▼気候変動は人ごとではない。県内でも一昨年、渇水と猛暑でコメの品質が落ち、精米の歩留まりが下がった。今に至るコメ不足につながり、緊急輸入を口にする政治家もいる。強い産地づくりに向け、新潟も知恵を絞らねば。

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