全国で原発の再稼働が進み、本県でも再稼働に向けた段取りが進んでいる。課題が残る中だが、原子力政策は各党が掲げた公約で埋没のきらいがある。積極的な論戦を求めたい。
石破政権は2月に閣議決定した新たなエネルギー基本計画で、東京電力福島第1原発事故の反省から記してきた「可能な限り原発依存度を低減する」との表現を削除し、活用路線を鮮明にした。
自民党は政策集で再稼働に加え、次世代型への建て替えを掲げる。連立を組む公明党は地元の理解を得た原発の再稼働を認める。
野党では日本維新の会と国民民主党が活用に前向きだ。参政党は次世代型を推進する。
一方、立憲民主党は実効性のある避難計画や地元同意がない原発の再稼働は認めない。共産党は原発稼働を批判し、れいわ新選組は即時の廃止を訴える。
残念なことに、国民生活に大きく関わる課題であるのに各党の訴えや公約の多くで原発を巡る問題は後回しにされている。立地する本県との間に意識の差があるのではないか。
原発は、発電時に二酸化炭素を出さない脱炭素電源として注目される。また緊迫化する国際情勢を背景に、エネルギー安全保障のためにも必要との見方がある。
しかし、使用済み核燃料の処理など未解決の課題は山積みだ。何より福島第1原発事故による甚大な被害が今も多くの人を苦しめている。事故から14年がたっても廃炉の道筋すら付いていない。
ロシアのウクライナ侵攻では原発が武力攻撃の対象になった。暮らしを脅かす存在になり得ることも忘れてはならない。
立地地域の不安と向き合う姿勢が政治に不可欠である。
本県の東電柏崎刈羽原発を巡っては、6月に首相をトップとする政府の原子力防災会議が重大事故が起きた際の避難計画などを定めた「緊急時対応」を了承した。
これにより再稼働に向けた国側の手続きはほぼ完了した。
国が了承したとはいえ、豪雪時に実際に避難ができるのか懸念は拭えない。緊急時対応では、民間で除雪できなければ自衛隊などが担うとするが、それ以上の具体策はみられない。
能登半島地震を振り返るべきである。石川県の北陸電力志賀原発周辺で道路が寸断され、避難計画の実効性が疑問視された。災害対応を丁寧に検討する必要がある。
デジタル化の進展により、データセンターや半導体工場が増え、電力需要は今後増加すると経済産業省は想定する。
必要な電力インフラをいかに整えるか。安全性を第一にした議論を求めたい。