安全なはずの学校で教員が子どもを深く傷つけたことは、決して許されない。事件の全容を早急に解明し、再発を防止する環境をつくりたい。
女子児童の盗撮画像や動画を交流サイト(SNS)のグループチャットで共有したとして、名古屋市の40代の小学校教員ら2人が性的姿態撮影処罰法違反(撮影など)の疑いで逮捕された。
チャットでは、女子児童の着替え中の姿や、児童の写真を悪用して人工知能(AI)で合成した性的画像約70点が共有されていた。教員とみられる約10人が参加し、画像を称賛し合う投稿もあった。
今年1月に少女のリュックサックに体液をかけたとして、名古屋市の30代の小学校教員が逮捕、器物損壊罪で起訴された。この教員の携帯電話を解析した結果、グループの存在が判明した。
チャットを開設・管理していたとみられるのは、逮捕された名古屋市の40代の教員だ。学校では教頭に次ぐ主幹教諭で、行事などの撮影を担当していた。学校備品のカメラで盗撮した疑いがある。
阿部俊子文部科学相は「被害を受けた子どものことを思うと怒りを覚える」と述べた。
模範となるべきベテラン教員が立場を悪用していたことに驚きを禁じ得ない。全ての教員に改めて重い責任を自覚してもらいたい。
信頼していた先生から被害を受けた子どもたちは、大きなショックを受けただろう。スクールカウンセラーによる心のケアに万全を期してほしい。保護者に対する丁寧な説明も不可欠だ。
3人を含むメンバーは匿名でやりとりをしていて、面識がなかった可能性がある。被害を広げないためにも、チャットの参加者全員の特定を急がねばならない。画像が拡散されていないか、調査する必要もある。
気がかりなのは、教員による盗撮が、全国各地で相次いでいることである。
文科省は、今回の盗撮事件を受け、私用のスマートフォンで児童生徒を撮影したり、学校の端末でも撮影画像を許可なく校外に持ち出したりすることがないよう都道府県教育委員会などに通知した。
通知では、盗撮防止策として、教室、トイレ、更衣室の定期的な点検や、子ども、教員に対するアンケートを挙げた。保護者らから相談があった場合は、警察などと迅速に連携し対応することが必要としている。
点検やアンケートが頻繁に行われれば、盗撮を思いとどまらせる効果が期待できよう。面談室など教員と子どもが1対1になる場所への防犯カメラ設置も検討に値するのではないか。
大人におびえなければならない環境は一刻も早く改善しなければならない。子どもを守るため実効性のある対策を講じたい。