政府がコメの増産を打ち出すなど、農業は大きな転換期にある。しかし担い手不足といった現状がある。いかに生産基盤を支え、安定的に食料を届けられるように農業を持続させることができるか。将来を見据えた論戦が望まれる。

 昨年の夏に起きた「令和の米騒動」が尾を引く中での参院選だ。

 スーパーの店頭からコメが消え、平均価格が前年同期の2倍に高騰した時期もあった。今も高止まりしたままで、生産者、消費者とも気をもむ状態が続く。

 米価高騰は長年の農政のひずみによるものだとする見方は多い。

 国は1970年代から40年以上、生産調整(減反)を続けた。2018年の減反廃止後もコメからの転作を促し生産を抑制した。

 米価を安定させた面はあっただろう。だが、需給が逼迫(ひっぱく)し、わずかな作柄の悪化で高騰を招くことが今回、露呈した。危機感を持ち農業政策を講じる必要がある。

 国は増産へとかじを切っている。昨年「食料・農業・農村基本法」を初めて改正し、食料安全保障の確保を明記した。

 これに伴って政府は今年、今後5年間の農政の方針「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定し、コメの生産量を23年の791万トンから、30年には818万トンに増やすとした。

 安定供給に向けた生産意欲を示す生産者もおり、4月末の時点で本県など34道県が主食用米の作付面積を前年より増やすとした。意欲を支える政策が重要になる。

 参院選の公約では、コメをはじめとした農業政策を巡り、与野党が増産や農家支援を掲げる。

 自民党は、既存予算とは別に農業予算を確保し、土地改良や共同利用施設の集約化など生産基盤を強化すると訴える。連立を組む公明党も、スマート農業の導入など、農業の構造転換を図るとした。

 野党の立憲民主党と国民民主党はそれぞれ、生産者に直接補助する新たな直接支払制度の導入を主張する。共産党とれいわ新選組は、価格保障と所得補償で支援するとし、参政党は生産者の待遇を公務員並みにすると強調した。

 日本維新の会はコメ輸入制度の見直しを進めるとしている。

 農業の環境は厳しい。23年度の食料自給率が38%にとどまる中、米国との関税交渉ではコメなど農産物の輸入拡大が迫られている。

 農地や農家の減少も著しい。県内で主に農業に従事する人は20年が約4万6000人と、10年から約4割減った。食料不足は年々、現実味を増している。

 状況を変えるには若い担い手の確保が急務だが、希望を持てる産業でなければ人は入ってこない。有効な政策と実行力のある候補者は誰か、見定めたい。