少子高齢化が進む中で、誰もが安心できる年金制度をつくらねばならない。各党の訴えを比較し、持続可能な制度を考えたい。

 年金制度改革法は先の通常国会で自民、公明、立憲民主各党などの賛成多数で可決、成立した。

 106万円以上としていたパートら短時間労働者が厚生年金に入る年収要件を撤廃したことが主な柱だ。年収要件は保険料負担を避けて働き控えが生じるため「106万円の壁」とされてきた。

 短時間労働者は厚生年金に加入しやすくなり、将来受け取る年金額が手厚くなる。基礎年金(国民年金)全体の給付水準改善にもつながることが期待される。

 ただ、将来の低年金が懸念される就職氷河期世代や若者に向けた対策としては不十分だ。

 就職氷河期世代の先頭集団は既に50代で、10年後には年金受給開始が間近になるが、この世代が厚生年金に入る機会は限られる。

 改革法は付則に、基礎年金の将来的な底上げを明記したものの、そのために必要な最大年2兆円の国費の財源確保策は示しておらず、実現するかは見通せない。

 参院選では、改革法に賛成した自公と立民が一致して、給付水準の確保や底上げを公約する。

 自民は、基礎年金の受給額の底上げを図りつつ、あらゆる世代に制度の信頼性と給付水準を確保するとした。公明は、将来世代も安心できるよう基礎年金の給付水準を底上げすると主張する。

 立民は、現役世代と若者の年金を底上げし、低所得高齢者への上乗せ給付をすると訴える。

 改革法を成立させた3党は、責任を持って底上げを図るための具体策を示すべきだ。

 残る野党の多くは、全ての人が一定額を受給できる最低保障年金の導入で共通する。無年金者を出さない狙いがあるだろう。

 このほかに、日本維新の会は受給期間調整や第3号被保険者制度を見直し、社会保障制度を「就業促進型」へ転換すると訴える。

 国民民主党は、モデル世帯前提の議論をやめ、個人単位を前提とした議論を行うとうたう。

 共産党は、年金積立金を給付の維持・拡充に充てるとし、れいわ新選組は国費を投入して社会保険料を引き下げることを盛る。

 参政党は予防医療への転換で社会保険料負担の軽減を図る。

 年金制度改革は5年に1度で、5年後に再検討しても一筋縄でいかないのは確実だ。各党は選挙戦を通じ議論を深めねばならない。

 社会保障では、赤字が続く地方の医療体制の再構築や、安心して子どもを産み育てられる環境の整備にも目配りが欠かせない。

 各党には地域間格差を広げないための処方箋も求められる。