日本は戦後80年の節目を、厳しい安全保障環境の下で迎えようとしている。脅威から国民を守る具体策は、参院選の大きな争点だ。
中国が軍事的な圧力を強めている。6月、中国の空母2隻が初めて同時に太平洋を航行し、空母から発艦した戦闘機が自衛隊機に異常接近した。この直後には自衛隊艦が台湾海峡を通過し、偶発的な衝突が懸念される事態となった。
中国は台湾の武力統一を排除せず、沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張する。自衛隊機への異常接近や、船による領海侵入を続ける。
中国抑止などを狙い政府は2025年度予算の防衛費に過去最大の8兆7005億円を計上した。
参院選で、自民党は、防衛産業の抜本的強化や、自衛官の給与・手当の改善を公約した。
立憲民主党は、宇宙やサイバー領域を統合した作戦能力の向上を掲げている。
公明党は、北東アジアでの多国間の安全保障対話・協力機構の創設を日本が主導するとした。
日本維新の会は、国内総生産(GDP)比2%までの防衛費増額や、スパイ防止法制定を盛った。
国民民主党は、主要な防衛装備を自国生産できる製造基盤の強化を打ち出した。
共産党は、対話と協力を重視した外交による日中関係の改善を訴えている。
れいわ新選組は平和外交により周辺国との信頼を強化、社民党は軍事予算を削減するとした。
参政党は参院選の公約では触れていない。
中国に対(たい)峙(じ)するために欠かせない日米同盟は岐路に立つ。
日本は27年度には防衛費と関連経費を合わせGDP比2%とする目標を掲げた。だが、トランプ米政権は3・5%に増額するよう求めたとされる。自国第一主義の米国への対応も焦点だ。
自民は日米同盟を基軸に同志国との連携を強化すると強調し、立民は同盟を「深化」するとした。
国民民主は、同盟を堅持、強化しつつ、米国に過度に依存する体制を見直すとしている。
立民、共産、れいわ、社民は、米軍基地が集中する沖縄県の負担軽減へ、普天間飛行場の名護市辺野古への移設中止を挙げた。
ロシアのウクライナ侵攻を巡り、中国の企業がロシアを物資面で支援しているとされている。北朝鮮は昨年秋以降、ロシアに派兵し、その見返りに核技術などが提供されるとの見方もある。
ロシアと中国、北朝鮮との関係強化は、さらなる脅威となり得る。ただし、防衛費の増額は、相手国に軍拡の口実を与えかねない。国民の負担増にも直結する。
参院選では、正確な情勢分析に基づいた論戦が望まれる。