母の作ってくれたもんぺを見つめる清水泰子さん=柏崎市南条
母の作ってくれたもんぺを見つめる清水泰子さん=柏崎市南条

 死屍累々(ししるいるい)の地獄絵図だった。80年前の東京大空襲1945年3月10日未明、B29爆撃機約300機が現在の東京都江東区、台東区、墨田区などで行った無差別爆撃。木造住宅の密集地域に大量の焼夷(しょうい)弾が投下され、強風も重なり、火災が広がった。(※ページ下部に詳細)で、清水泰子(ひろこ)さん(85)=柏崎市南条=は、母が作ってくれたもんぺをはいて逃げ延びた。腰や膝の部分は爆撃の影響で焦げている。母は空襲で亡くなり、戦後は縁もゆかりもない柏崎で養父母に育てられた。

 「戦争は人を鬼にする。同じ道を再びたどってはいけない」。母の形見のもんぺを握り、つぶやいた。

 清水さんは1940(昭和15)年、東京の本所区(現在の墨田区南部)で生まれた。父を早くに亡くしたが、戦時下にもかかわらず、日本舞踊を習ったり有名な幼稚園に通ったりしていた。恵まれた家庭だった。

 東京大空襲で暮らしは暗転する。家を焼かれ、優し...

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