激動する国際情勢の中、存在感を増す中国にどう向き合い、経済安全保障の強化につなげるのか。具体策が問われよう。

 バイデン米政権が提唱する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」が発足した。メンバーには日本や韓国、インドなど13カ国が名を連ねた。

 IPEFは(1)供給網の強靱(きょうじん)化(2)インフラ・脱炭素(3)税制・反汚職(4)貿易-の4本柱で構成する。

 新型ウイルス禍やウクライナ危機で、半導体などの戦略物資を特定の国に依存するリスクが高まっている。脱炭素も喫緊の課題であるのは間違いない。

 バイデン米大統領は、23日の日米首脳会談後に開かれた発足会合で、「21世紀の競争を共に勝ち抜く」と強調した。

 米国がIPEFを主導する背景には、覇権主義を強めて台頭する中国の存在がある。

 中国は、日本、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国も参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)に加盟している。昨年9月には、環太平洋連携協定(TPP)への加盟も申請した。

 一方米国は、2017年にトランプ前政権がTPP離脱を表明し、インド太平洋地域での影響力が弱まっていた。

 バイデン政権もTPP加盟には消極姿勢を崩していない。苦肉の策でIPEF構想を打ち出し、これを足掛かりに主導権を取り戻す狙いがある。

 今後問われるのは、複数の枠組みが地域に並立する中で、具体的な成果をどう出していくのかだ。

 RCEPやTPPは、貿易拡大のため、各国の関税引き下げに踏み込んでいる。一方、IPEFは米国内の産業保護を優先し、関税を協議の対象外とした。

 米市場開放の魅力を欠き、中国との結びつきが強いASEANなどの参加国にとって、効果が見えにくいと指摘されている。

 岸田文雄首相も会見で「地域のパートナーと緊密に議論をしながら、具体的な成果を生み出していく」と曖昧な説明に終始した。

 日本はこれまで米国と連携し、各国に参加を呼びかけてきた。今後は実効性のある枠組みに向けて米国の取り組みを後押ししたい。

 同時に、自由貿易を推進するTPPの復帰を米国に粘り強く働きかける必要がある。

 今回の日韓歴訪でバイデン氏は両国首脳との会談や、日本、オーストラリア、インドとの4カ国による枠組み「クアッド」の首脳会合を通し連携強化に力を入れた。

 こうした動きに対し、中国は「中国を排除するものだ」と反発を強めている。

 日本と中国は経済的、歴史的なつながりが強い。岸田政権は日米同盟を踏まえつつ、対立を深める米中の橋渡し役として独自の外交力を発揮してもらいたい。