「ストップ・ザ・競泳盗撮 県水泳連盟が対抗策 登録制打ち出す」。盗撮が社会問題になっている今の話ではない。1999年6月22日の本紙夕刊1面にこんな見出しの記事が載った

▼記事によると、会場での撮影希望者は身分を証明する物を示して住所と連絡先を記入し、3千円を払って許可証を受け取る。お金は後で返還されるが、不審者には事情を聞き、場合によっては警察への通報もある

▼時は流れ、盗撮防止に向けたさまざまな取り組みがなされた。性的姿態撮影処罰法なる法律もできた。しかし、忌まわしい行為はなくなるどころかスマートフォンの普及で手口は巧妙になり、取り締まる側とのいたちごっこが続く

▼かつては「聖職」とされた先生が徒党を組んで悪事に手を染めていた。女子児童を盗撮した画像をSNS上で共有したとして逮捕、起訴された。事実とすればその罪は大きく、限りなく深い。同じような犯罪は各地で起きている

▼手元にある何冊かの国語辞典で盗撮という言葉を引いてみた。意外というべきか、見出し語に掲げていたのは1冊だけだった。最近のものを調べてみると載っている。多発する愚行の急速な広がりが、辞書からも見て取れる

▼ある中学校の行事の取材に訪れると、玄関に行列ができていた。受け付けの教員から氏名、住所、連絡先を書くように求められた。わが子を撮る保護者も同様の対応だという。写真や動画の撮影許可は新聞社とて例外ではない。複雑な気持ちでペンを走らせた。

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