
12歳で家族と離れて朝鮮半島から引き揚げた体験を語る松井晃さん=見附市
戦場において、生と死は常に紙一重だった。どん底から生き延び、戦い終えても苦しみは続いた。国民一人一人の命は軽んじられた。決して繰り返してはならない時代を知る証言者たちは、戦争の果てに何を思うのか。戦後80年の今、その声に耳を傾けた。(9回続きの8)
<7>“故郷”サイパン訪ね知った戦争のむごさ…阿賀野市・82歳の佐藤久枝さん
少年にはあまりにも過酷で凄惨(せいさん)な体験だった。日本の敗戦翌年の1946年、12歳で家族と離れ、独りで現在の北朝鮮から38度線を越え、新潟県に引き揚げた。松井晃さん(90)=見附市=は自身の体験を自分史として書き記し、訴え続ける。「みんな生きるのに必死で、情けなどなかった。二度と戦争を起こしてはいけない」
父二郎さんが...
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