
父の写真を手に「急いで日本に逃げたから、父の持ち物一つも残っていない」と話す佐藤久枝さん=阿賀野市
戦場において、生と死は常に紙一重だった。どん底から生き延び、戦い終えても苦しみは続いた。国民一人一人の命は軽んじられた。決して繰り返してはならない時代を知る証言者たちは、戦争の果てに何を思うのか。戦後80年の今、その声に耳を傾けた。(9回続きの7)
<6>満州開拓団の集団自決で亡くなった弟2人…新潟市中央区・93歳の小出公司さん
「夢に出てくる父は、いつも後ろ姿なんです」。戦時下の1944年、1歳でサイパンから引き揚げた阿賀野市の佐藤久枝さん(82)は、現地に1人残った父を失った。後に帰ってきたのは、父の名前を記した紙だけ。写真は1枚しかない。終戦から80年を迎えた今、...
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