ふるさとや、縁のある地域を応援するという目的が揺らぎ、競争が過熱している状況を懸念する。抜本的な対策が求められる。

 ふるさと納税制度による2024年度の寄付総額は1兆2728億円となり、5年連続で過去最高を更新した。

 寄付で居住自治体の住民税が軽減される利用者は前年から約78万人増え1080万人だった。

 本県への寄付額は443億1300万円で、初めて400億円を超えた。特産のコメを返礼品とする南魚沼市が県内トップだった。

 人口減による歳入の減少に苦しむ地方の自治体にとっては、ありがたい助けだといえよう。

 一方で、より多くの寄付金を得るため、一部の自治体でルール違反が行われていることが心配だ。

 総務省は6月、基準に違反したとして2市町を制度の対象から除外すると発表した。

 1件は返礼品の産地を業者が偽装したと知りながら実地調査を行わず、もう1件では地方税法で定めた、寄付額の30%という上限を超えた金額で返礼品のコメを調達していた。

 これまでにも上限を超えたとして3市町が除外されている。

 ルール違反の背景に、寄付金を巡るアピール競争の過熱がある。

 豪華な返礼品で多額の寄付を集めた自治体は財政が潤い、歳入の半分を占めるケースもある。寄付額の大幅増を前提に予算を編成する自治体も現れた。

 しかし、寄付金は本来予備的な財源である。その多寡が自治体財政の根幹を左右するのは行き過ぎだとの指摘もある。自治体はふるさと納税に過度に頼ることなく、財政の健全化を目指してほしい。

 総務省は26年10月から返礼品のルールを厳格化する。地元で作っていない産品は、「ゆるキャラ」や地元スポーツチームのグッズのように、自治体PRに活用した実績のある製品に限定する。

 他地域で生産した品物に自治体ロゴを表示しただけの返礼品があったことが問題視されたためだ。

 ただ、自治体が制度の枠内で魅力的な返礼品を用意するために工夫を凝らすと、総務省が制度を改正して規制することが繰り返され、反発も出ている。

 総務省は昨年6月の改正で、ふるさと納税の寄付者に特典ポイントを付与する仲介サイトの利用を禁じるとしたが、楽天グループは「過剰に規制するものだ」として、無効確認を求めて東京地裁に提訴している。

 ふるさと納税は地方創生を旗印に政治主導で始まった制度だ。競争の過熱でその趣旨から外れてきたならば、国は場当たり的な対応ではなく、責任を持ってあるべき姿に立ち返らせるべきだ。

 同時に、地方の人口減少問題を解決に導くための手だてを考えなければならない。