双方の持続的な成長につなげることが重要である。日本は人材育成など広い分野でアフリカとの協力を強化したい。
日本主導でアフリカの発展を議論する第9回アフリカ開発会議(TICAD)が22日、横浜宣言を採択して閉幕した。アフリカの約50カ国の首脳らが参加した。
宣言はインフラへの投資加速や人材育成などを盛り込み、石破茂首相も会見で「アフリカの未来への投資拡大や産業協力強化、人材育成に取り組む」と述べた。
日本がアフリカの成長に継続して関与する姿勢を、改めて強調したといえよう。
ただ、従来の支援は困難になっているのが実情だ。
日本政府は30年を超すTICADの歴史で、今回初めて巨額拠出の表明を見送った。
背景には、経済の長期低迷で他国への巨額援助が難しい日本の財政状況がある。2025年度予算で日本の政府開発援助(ODA)は5664億円と、ピークだった1997年度から半減した。
今後は、アフリカのニーズをより細やかにくみ取り、日本の技術や知見を生かした支援を提供することが重要になるだろう。
会議で石破首相は、今後3年間で知識や技術に優れた高度人材など30万人を育成するとした。
人工知能(AI)分野は新機軸となる。保健医療分野は、米国が対外援助を担った国際開発局の廃止を決めた影響で、アフリカではエイズウイルス(HIV)の関連死者の急増が予想されるなど、人材育成が急務となっている。
日本が貢献できる分野であり、期待に応えたい。
会議では、民間投資を加速させる方針も示された。
アフリカの人口は約15億人で、今後も大幅な増加が見込まれる。鉱物資源も多く、「最後のフロンティア」とも呼ばれる。
しかし、行政手続きの不透明さや社会風習の違いが、日本企業の進出のネックとなっている。
安定した投資環境が必要である。日本政府は、アフリカ各国に投資法規の整備などを働きかけてもらいたい。
市場として成長の可能性を秘めたアフリカは、世界から注目を集めている。
特に中国は、昨年北京で開かれた中国アフリカ協力フォーラムで、習近平国家主席が3年間で7兆円超の資金拠出を表明するなど、アフリカでの存在感を高める。
一方で、過剰融資で低所得国が債務危機に陥る「債務のわな」も問題化している。
日本が目指す支援の在り方は一線を画すものといえる。
横浜宣言は、日本とアフリカを「課題に対処する革新的かつ永続的な解決を『共創』する」パートナーとうたった。相互利益を実感できる長期的な関係を築きたい。