いつ、どこでクマと遭遇してもおかしくないと認識したい。出合わぬよう一人一人が警戒と対策を強め、被害を防がねばならない。

 クマによる人的被害が各地で相次いでいる。

 ヒグマが生息する北海道では、登山者や新聞配達中の男性が襲われて亡くなった。

 岩手県では自宅にいた女性が、秋田県では福祉施設の敷地内で入所者が、それぞれクマに襲われて死亡するなど、痛ましい事故が後を絶たない。

 本県では4~7月に、過去10年の平均を上回る4件の人身被害が起きている。

 山に入る際は、クマ鈴や撃退スプレーの携帯が不可欠だ。複数人での登山も心がけたい。

 事前にクマの目撃情報があった場合は、自治体などが入山を規制することも必要だ。

 人を恐れない「アーバンベア」は各地で問題になっている。人口減少に伴う耕作放棄地の増加などで、分布域が拡大している。

 クマは学習能力が高い。迷い込んだ人里で食べ物にありつけば、成功体験として記憶し、人に慣れ、人間を怖がらなくなる。

 クマに人里での成功体験を与えないことが肝心だ。行動範囲をこれ以上広げさせてはならない。

 そのために私たちができることは、クマを引き寄せる生ごみや餌となる柿の実を放置しないといった管理の徹底のほか、隠れ場所や移動経路となる耕作放棄地、やぶの草刈りなどだ。

 改正鳥獣保護管理法が来月に施行され、自治体の判断で市街地での「緊急銃猟」が可能となる。環境省はガイドライン(指針)を公表し、市町村に緊急銃猟の判断や、職員の役割分担、ハンターの確保を求めた。

 指針に基づいて訓練を行う自治体もあるが、住民の安全確保や銃猟の担い手育成など課題は多い。

 人員や予算の面から対応が限界だという自治体もある。複数の市町村が連携し、専門人材の雇用や育成を図ることが必要だろう。国の財政支援も欠かせない。

 本県は今月上旬、クマ出没警戒警報を発令した。

 6月に阿賀野市の集落近くで出没するなど、4~7月の出没件数が629件と過去最多を更新したことや、ツキノワグマの餌となるブナの実が今秋は凶作と予測されるためだ。

 凶作の秋は人身被害が増える傾向にある。十分に警戒し、共生していきたい。