日本とアフリカの長年の友好関係に水を差しかねない問題が起きた。事実を周知し、早急に収拾してもらいたい。
アフリカとの架け橋となる人材を育成するため、国際協力機構(JICA)が三条市など地方の4市をアフリカの4カ国の「ホームタウン」に認定した。三条市はガーナのホームタウンとなった。
ところが、「移民が増える」「治安が悪化する」などの誤情報が拡散し、各市役所に不安や抗議の電話が殺到している。
三条市がホームタウンとなったのは、市とJICAなどが2024年に締結した地域おこし研究員のプログラムに関連し、対象者がガーナで活動する予定となっているからだ。
ホームタウンは、相互交流を強め、国内の地域活性化とアフリカの発展につなげるのが狙いだ。この取り組み自体は評価できよう。
混乱のきっかけは現地政府や報道機関の発信だった。
千葉県木更津市がホームタウンとなったナイジェリアの大統領府は、日本政府が「高い技能を持つ若者に特別なビザ制度を創設する」と説明した。日本政府が全く想定していないものだった。
タンザニアの地元メディアは、日本がホームタウンの山形県長井市を「タンザニアにささげた」と報道した。市がタンザニアの一部になるとの誤解を与えかねない。
いずれに対しても、日本政府やJICAは訂正を求めた。しかし、各市役所は電話やメールへの対応に追われ、「JICAや外務省の準備不足があった」との批判の声も上がった。残念な事態だ。
日本政府とJICAには引き続き、正確な情報の発信に努めてもらいたい。
現地の政府や報道機関がなぜ事実と異なる発信をしたのか。原因を突き止める必要もある。
ホームタウンの位置付けについて、4市との間で再確認することも求められよう。
気がかりなのは、日本とアフリカとの関係に及ぼす影響だ。
日本政府は30年以上、アフリカ開発会議(TICAD)を主導してきた。先日、横浜市で開かれた会議では、アフリカの人材育成もテーマとなった。ホームタウンは、会議に合わせて認定された。
人口増加が続くアフリカでは、若者の失業や働き口の確保が課題となっている。一方、日本では少子化で労働力不足が進み、働き手をアフリカから獲得しようとする動きもある。
アフリカの若者が日本の技術を習得すれば、双方の利益となる可能性がある。ただし、日本への受け入れを巡っては、文化や習慣の違いなど課題も少なくない。
まずは共生できる環境をつくらなければならない。そのためにも、今回の問題を乗り越え、親交を深めていきたい。