政策に優先順位をつけ、めりはりのある予算編成を行ってもらいたい。野放図に借金を重ねることは避けなければならない。

 国の2026年度予算編成で一般会計の概算要求の総額は122兆円台に膨らむ見通しとなった。3年連続で過去最大を更新し、120兆円を超えるのは初めてだ。

 防衛力の抜本的強化を進める防衛費、高齢化に対応した社会保障費も最大となった。

 防衛省の要求は約8兆8454億円だ。23~27年度の5年間で防衛費を計約43兆円とする方針で、今回も含め、これまでに計約32兆6千億円となる。

 財源は法人、所得、たばこの3税の増税で賄う方針だが、所得税増税の開始時期の決定は先送りされている。

 23年度予算では、防衛費に多額の使い残しがあったことが判明した。予算の膨張に現場が対応しきれていないとの指摘もある。「規模ありき」との批判も根強い。

 防衛力強化の妥当性について、厳しくチェックするべきだ。

 厚生労働省は34兆7929億円を求めた。高齢化に伴い、年金や医療といった社会保障費が要求総額に占める最大の項目だ。

 医療機関の収入に当たる診療報酬改定などは、金額を示さない「事項要求」とし、予算編成の過程で詰めるとした。

 医療従事者の処遇改善は急務だが、国民の負担が増す可能性もある。関係者の声にしっかり耳を傾けてほしい。

 気がかりなのは、少数与党という不安定な政権運営が続く中、与野党が大きな財源を必要とする政策を掲げていることである。

 高校授業料無償化を巡っては、26年度から収入要件を撤廃することなどで、自民、公明両党、日本維新の会が合意した。実現には約4千億円が必要とみられるが、確保する道筋は立っていない。

 野党が早期実現を目指すガソリン税の暫定税率の廃止は、年1兆円規模の税収減につながる。

 物価高対策として参院選で争点となった消費税減税や給付金も巨額の負担を伴う。

 与野党には国の財政と経済状況を踏まえ、政策と財源をセットにした議論を望みたい。

 長期金利が上昇し、国債の償還や利払いに充てる国債費が過去最大となった。

 財務省は国債費として32兆3865億円を計上する。要求の計算に使う想定金利は2・6%とし、25年度から大きく引き上げた。

 日銀が金利を極めて低い水準に抑えていた時期は、巨額の国債を発行しても利払い費を抑えられた。しかし、マイナス金利政策は24年3月に解除された。

 国の長期債務残高は25年3月末で計1106兆円に上る。政府には、「金利のある世界」を意識した予算編成が求められる。