総括によって混迷に終止符を打てるかどうかだ。内紛に終始していては、国民生活を停滞させる。与党としての責務を果たす体制の構築を急ぐべきである。
自民党は2日、参院選大敗の総括報告書を取りまとめ、両院議員総会に諮った。報告書は「国民の鬱積(うっせき)した閉塞(へいそく)感に対し、十分な解決策を提示できなかった」と反省を示し、「解党的出直しに取り組む」と総括した。
敗因としては、派閥裏金事件を中心とした政治とカネ問題による信頼喪失や、物価高対策として公約した現金給付が国民に響かなかったことなどを挙げた。
報告書は党総裁である石破茂首相の責任には直接触れなかった。首相自身も自らの進退について「しかるべき時期に責任を判断する」とし、曖昧なままにした。
森山裕幹事長ら党四役は辞任の意向を表明した。だが石破氏は「余人をもって代えがたい」と述べ、続投させる可能性を示した。
誰も責任を取らぬ幕引きとなれば、党内の理解が得られるのか疑問である。
両院総会が、冒頭以外は非公開だったことは残念である。
どういった反省や批判が出たのか、やり取りをつまびらかにしてこそ、抜本的な出直しにふさわしいのではないか。
総括を受け、党総裁選挙管理委員会は総裁選前倒しの是非を巡る意思確認のため、党所属国会議員と都道府県連に通達を出した。8日にも是非を判断する。
前倒しを求めた議員名は公表する。ただこの方針には、総裁辞任を求める勢力の萎縮を狙ったものとの疑念が膨らんでいる。
党内対立が激しくなり、「反省」とはかけ離れた動きに映る。求められているのは、党再生への本質的な議論である。
裏金事件の真相を解明できないまま、先の通常国会を終わらせた与党に対する国民の失望が大きいのは間違いない。
企業・団体献金や物価高対策、ガソリン減税に関する野党との協議を進めるためにも、党の執行部体制を早く落ち着かせることが欠かせない。
野党と折り合いを付け、政策を前に進めるのが責任政党のあるべき姿である。
喫緊の課題は内政の行き詰まりだけではない。
トランプ米政権が発動した相互関税は、日本の負担を軽減する特例措置が適用されるとの説明があったものの、適用時期など不透明さが拭えぬままだ。
中国政府が3日に開催する抗日戦争勝利80年の行事にはロシア、北朝鮮の首脳も出席し、三者の結束を示すとみられる。
こうした緊張感の中での不安定な政治を憂慮する。自民党議員は、いかに国益を損ねているか、胸に手を当てるべきである。