ことさらに軍事力を誇示する内容だった。3カ国のトップが肩を並べたことで、地域の軍事的緊張が高まることを懸念する。
中国は3日、「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利80周年」の記念行事を実施した。習近平国家主席は演説で、抗日戦争で中国が大きな犠牲を払って世界平和に重大な貢献をしたとし「戦勝国」としての立場を強調した。
軍事パレードでは、戦闘機や無人機、極超音速兵器など多数の新型兵器に加え、米本土に届くとされる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪3」も公開して軍事力をアピールした。
習氏は演説で台湾統一を念頭に「世界一流の軍隊の建設を加速させ、国家主権と統一、領土の一体性を断固守らねばならない」とも述べた。強国路線を鮮明にした。
行事ではロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金(キム)正恩(ジョンウン)朝鮮労働党総書記が、習氏の両隣に並んだ。ベトナムやイランなど26カ国の元首・首脳級も出席した。
米国を中心とした枠組みに対抗する新たな国際秩序の構築を目指すようにも映る。混迷する国際社会の分断が広がることはないか、危惧する。
看過できないのは、ウクライナ侵攻を続けるロシアと、核・ミサイル開発を進める北朝鮮のトップを国際舞台の場に招き入れたことである。3カ国の首脳が北京で軍事パレードを観覧するのは1959年10月以来で、極めて異例だ。
力による現状変更や、国際ルールを無視した核開発を是認することにつながりかねない。
プーチン氏は8月31日から中国を訪れ、9月1日まで開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議にも出席した。ロシアメディアによると、外国1カ国に4日間滞在するのは異例のことだという。
中ロ両国はエネルギーや宇宙、人工知能(AI)などの分野で20余りの協力文書も締結した。
大国のトップである習氏がまずなすべきは、ロシアによるウクライナ侵攻を止めるための働きかけではないか。
金氏にとっては、多国間の舞台にデビューする場にもなった。
訪中直前には、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を巡る「次世代の技術」を視察した。北朝鮮の核開発に厳しい態度を取る習氏に対し、「核保有国の最高指導者」としての立場を明確にしようとしたとみられる。
ロ朝が軍事的に接近する中で、中国は北朝鮮への影響力を維持したい思惑もあるだろう。ただ、東アジアの安定のためには、北朝鮮に核・ミサイル開発を即刻中止させなければならない。
記念行事後、プーチン氏と金氏による会談が行われた。一方的に戦争を始めた国と、その戦争に派兵する国が結束を強める機会を与えた中国の責任は重い。