
坂口安吾
新潟市出身の作家、坂口安吾(1906〜55年)が終戦後の46年11月に、18歳の雑誌読者へ宛てた手紙が見つかった。代表作である「堕落論」「白痴」が発表された年で、無頼派作家として注目された時期。手紙の寄贈を受けた松之山安吾の会(十日町市)の髙橋主計(かずえ)さん(72)は「売れっ子作家となったにもかかわらず、丁寧に返事した安吾の真面目さが分かる資料だ」としている。
手紙は、堕落論と白痴が発表された雑誌「新潮」読者からの手紙に対する返信とみられる。「堕落論その他、小説も評論も同じものだけれども、その激しさに君がついてこれなかつたら、決してついてくる必要はない。思想に軽率な飛躍は最も禁物です」と答える。
「君の真剣な問ひに対して、ゆつくり返事を書く暇がないのは本当に残念です」「然し、本当に忙しいのです。今、私は、今書いている長編小説のことで頭が一杯で、どうしても、身を入れて手紙を書く暇がありません」としながら、手紙は400字詰め原稿用紙6枚に及び、「私は書きすぎたやうだ」とする。
「僕は僕の生き方に...
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