首相の座に一番近い与党自民党の総裁を決める選挙戦にしては、内向きの論戦に終始している。このまま総裁選が進めば、党の活気を感じられないばかりか、次期総裁への期待もしぼむ。
自民総裁選で24日、立候補している小林鷹之元経済安全保障担当相、茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗前経済安保相、小泉進次郎農相が日本記者クラブ主催の討論会に臨んだ。
所得増を含む物価高対策や、外交・安保を巡り議論を交わした。
候補者が互いを指名して質問する討論会のヤマ場では、候補者同士で政策の一致点を確認するような発言が相次いだ。
一方で、質疑を通じて他候補の欠点をあぶり出そうとする討論会特有のやりとりは見られなかった。論争を巻き起こすより、党内融和に重心がある今回総裁選の本質が表れたと言えよう。
5候補はいずれも昨年の総裁選に出馬している。1年前の討論会で力説した持論についても、追及されると、状況の変化などを理由に引っ込める候補が目立った。
温厚な討論といえば聞こえはいいが、活力不足は明らかだ。
告示後の記者会見などでも、党内で意見が割れる選択的夫婦別姓制度の導入に、前向きに取り組もうとする候補はいない。
派閥裏金事件に関係した議員を要職で起用することについては、全候補が「適材適所」などとして含みを持たせている。
総裁選は有効票の過半数を得た候補がいなければ、上位2人の決選投票となる。その際に重要な国会議員票を意識し、波風を立てないようにしているのだろう。
しかし、迫力を欠いた内向きな主張ばかりでは、総裁を志す意気込みは伝わらず、目指す国家像や社会像も鮮明にならない。
焦点である物価高対策では、大半の候補者が石破政権が掲げた一律2万円の単純な現金給付は取り下げるとする一方、野党が主張した消費税減税は、即効性を疑問視しつつも、与野党協議の議題から排除しない考えを示した。
総裁選後を見据え、少数与党に不可欠な野党連携の選択肢を探っているからに違いない。
討論では、連立政権の枠組みを広げる場合の実現時期などで温度差がにじんだ。
野党連携をどう進めるかは、国会議員はもちろん、地方の党員・党友が投票先を判断する上でも欠かせない要素だ。各候補は明確な考えを示すべきではないか。
企業・団体献金の在り方や、人口減少問題への対処策、北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向けた道筋など、語られなければならない課題は山積している。
誰が総裁になれば党の再生が可能なのか。それを見極めるためにも、耳を傾けたくなるような積極的な論戦を求めたい。