この秋は5年に1度の国勢調査が実施されている。わが家にも調査員を務める町内会長さんが用紙を配りに来てくれた。しおりを眺めながらスマホを使って、15分ほどで入力を終えた
▼10月1日現在の人口や職業を調べる国勢調査は1920(大正9)年に始まった。当時の広報用の唱歌にこんな一節があった。「調査する日の近づかば成(なる)たけ旅行(たび)をせぬものぞ」。10月1日は必ず家にいるようにという呼びかけだ。現在のような「常住地」ではなく、調査時にいる所を調べていたため、例えば午前零時に旅行中だと、宿屋の世帯員の扱いになってしまった。精度を上げるため、国も必死だった
▼定期調査できないことが1回あった。戦況が悪化し、終戦を迎えた45年だ。広範な調査が難しかった。この時は2年後、復興に向けて臨時調査を実施した
▼今も課題はある。未提出の世帯が増えたことだ。5年前の前回は全国で16・3%に上った。調査員が周囲から聞き取ったり、自治体が住民基本台帳で補ったりするが、職業や5年前の居住地など調べきれない項目もある
▼海洋の研究者から観測を継続する大切さを聞いたことがある。その瞬間、その瞬間を捉える観測は後でさかのぼることができず、一日一日が大切なのだと
▼近所の大きな郵便局で国勢調査のネット回答を手助けするコーナーを見かけた。回答率向上を狙い、国が始めた。調査が「2世紀目」に入る中、統計という資産を次の世代にどうつなぐか。私たちの回答が大事になる。