多くの人命が非情な攻撃で連日のように失われている。飢餓も深刻化するばかりだ。血と涙に染まった日常に、一刻も早く終止符を打たねばならない。

 パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘は、2年となった。

 ガザでの死者は、6万7千人を超え、飢えや栄養失調で450人以上が死亡した。

 攻撃により住民は避難の繰り返しを余儀なくされている。廃虚となった街で、地獄のような状況が続いていることに、心が痛む。

 ◆米が20項目の和平案

 戦闘開始から2年を前に、トランプ米大統領が20項目の包括的和平計画を示した。

 計画を巡りイスラエルとハマスがエジプトで、同国と米国、カタールの仲介による間接交渉に臨んでいる。

 これまで何度も停戦協議は行われたものの、決裂や短期間の停戦にとどまった。

 今度こそ是が非でも交渉を成功させ、停戦と恒久的な和平につなげねばならない。

 計画は、イスラエルとハマスが合意すれば即時停戦し、イスラエル軍は段階的に撤収することや、正式合意後72時間以内にハマスが人質全員を解放することなどが柱だ。

 ガザの戦後統治はハマスの関与を認めず、イスラエルによる占領や併合も認めないとしている。米国とアラブ諸国が連携した治安維持部隊の創設や、トランプ氏をトップとした監督機関の設置などを盛り込んだ。

 イスラエルは計画に米国と合意し、ハマスは全ての人質解放に条件次第で同意した。

 停戦へ向け一歩前進したといえる。ただ、イスラエルとハマスの主張は隔たりが大きく、両者が合意できる保証はない。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスの人質解放はイスラエル軍が完全撤収せずに実施されることや、ハマスの武装解除も要求している。

 一方、ハマスはイスラエル軍の完全撤収を要求し、ガザ占領が終わるまで武装解除には応じないとしている。

 和平計画は、イスラエル寄りだとする識者もいる。

 そうした中でハマスが条件付きで同意したのは、トランプ氏からの強い圧力のほか、カタールやトルコなどの関係が深い国々も計画の受け入れを迫り、外交的に外堀を埋められたからだとみられる。

 2年前にハマスがイスラエルを奇襲して市民ら約1200人を殺害し、約250人を拉致して人質にした戦闘の発端となった行為は、断じて許されない。

 現在拘束下の人質は約50人で、生存者は20人前後とされる。停戦交渉に進展の兆しが見えたことで、家族はこれまでになく解放への希望を抱いている。願いは、かなえねばならない。

 攻撃を仕掛けたのはハマスだとはいえ、国際法を無視したイスラエル軍の攻撃は過剰であり、強く非難されて当然だ。

 ◆目に余る非情な攻撃

 学校や病院にも無差別に攻撃した。子ども約2万人、女性は1万人以上が亡くなった。国連機関の職員やジャーナリストも多数が犠牲となった。

 飢餓や栄養失調による死者も増え続けている。ガザ境界の封鎖を続け、食料配給所でも発砲したことは言語道断だ。

 ネタニヤフ氏には、「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を扇動したと、国連が結論づけた。国際刑事裁判所(ICC)は、飢餓を用いた戦争犯罪と、殺人や迫害など人道に対する罪の疑いで逮捕状を発付した。

 イスラエルの専門家は、ナチスのホロコースト(大虐殺)などユダヤ民族としての過去の被害感情を、ネタニヤフ氏が巧みに利用していると指摘する。

 ハマスの奇襲が民族のトラウマを覚醒させ、共存の道がかき消されているという。

 国際社会では、パレスチナ国家を樹立し、イスラエルと2国家共存による和平を支持する動きが広がっている。

 その実現のためにもイスラエル、ハマスの双方が、今こそ歩み寄ることが不可欠だ。