コメ余りが深刻化する一方で、小麦など穀物価格の世界的な高騰に懸念が強まっている。
国民の食料を将来にわたり安定的に供給するためにも、輸入の依存度が高い小麦や大豆、飼料への転換を着実に進め、自給率を向上させることが欠かせない。
農林水産省は、2022年産の主食用米の作付面積について、本県を含む37道府県が前年実績から減らす意向だとする4月末時点の調査結果を発表した。前回調査(1月末時点)の22道府県から大幅に拡大した。
本県は21年産の作付面積10万1800ヘクタールから1~3%程度減らすとしている。
主食用米の消費量は人口減少や食生活の変化に加え、新型コロナウイルス禍の影響で減少し、米価も下落傾向にある。
こうした中で、作付けの減少が進んだのは、穀物価格の高騰で主食用米以外の生産に転換した方が有利になったためだ。
転換作物については飼料用米を増やす自治体が最も多かった。飼料となるトウモロコシの国際価格が高騰している上、農家にとって転換が容易なことが理由にある。
麦への転換を増やす地域も少なくない。国などの補助金を含めれば主食用米より所得が上がると見込む農家が増えたためだろう。
国に求められるのは、農家がこうした取り組みを安心して進められる明確な道筋を示すことだ。
政府、与党はウクライナ危機などで肥料価格が高騰していることを受け、農家を支援する補助金制度を創設する検討に入った。
コメや米粉、小麦など国内産の消費拡大に向けた施策もしっかり進めてもらいたい。
20年度の食料自給率はカロリーベースで37%と、過去最低の水準に落ち込んだ。政府は30年度に45%とする目標を掲げているが、実現は見通せない。
一方で、世界各地の異常気象やウクライナ危機で食料の安定供給は不透明になっている。
政府は、不測の事態が生じても必要な食料を確保する食料安全保障の強化を急がねばならない。
本県は、22年産の作付面積を前年より3・2%減らす生産目標を立てている。
4月末時点の調査で1~3%程度の減少幅となったことについて、県は「転換の必要性を農家が感じてくれた結果」と受け止めながらも、飼料用米などへの転換を今後も粘り強く進める考えだ。
ただ、地域によって取り組みに温度差がみられるという。市場からの引き合いが高い魚沼産コシヒカリの産地では前年並みの作付けとするケースが多いようだ。
米価の下落につながらないよう、需要に見合った生産が求められる。県は需給状況などの情報を丁寧に発信し、本県産のブランド維持、向上に努めてもらいたい。
