人道危機を終わらせる一歩を踏み出した。双方の歩み寄りを大切にしたい。合意事項を着実に履行することが終戦につながる。
トランプ米大統領は8日、イスラエルとイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザを巡る和平計画の「第1段階」で合意したと交流サイトで発表した。
ハマスも9日、戦闘終結とイスラエル軍のガザ撤収などを定めた合意に達したと発表した。
7日で2年となったガザ戦闘の終結に向け、ようやく訪れた具体的な動きである。この和平の機運を壊してはならない。
トランプ氏は、ハマスが全ての人質を「間もなく」解放し、イスラエル軍がガザの一部から撤収することで合意したとしている。
ハマス拘束下で生存する人質は20人前後とされる。無事にイスラエルにいる家族の元に戻ることをまず見届けたい。
ハマスと関係が深いカタールとエジプト、トルコによる働きかけが妥結へ導いたといえる。
今回の交渉を主導してきたトランプ氏は、合意を受け「強固で永続的な平和に向けた第一歩だ」と外交成果を誇る。
しかし、両者の停戦協議はこれまで決裂を繰り返してきた。楽観することなく、終戦への道筋を描く必要がある。
米主導による20項目の包括的和平計画は、即時停戦や人質解放のほか、戦後統治にハマスの関与を認めず、イスラエルはガザを占領、併合しないとしている。
ただ、第1段階が20項目のどの部分に相当するかは定かではない。第1段階に続く交渉の先行きも見通せない。
「ハマスを排除する」として強硬姿勢を崩さずにきたイスラエルのネタニヤフ首相の動きが気がかりだ。合意通りに攻撃をやめるのかは予断を許さない。
これ以上、犠牲者を増やしてはならない。ガザでは飢饉(ききん)も起きている。食料の配給に頼らざるを得ない人々がいる。飢えや栄養失調は深刻で、多くの命が失われている。
あまりにも長い対立に区切りをつけ、中東の緊張緩和へと進むべきときだ。
国連のグテレス事務総長は、パレスチナ国家樹立によるイスラエルとの「2国家共存」を実現する機会だと呼びかけた。鍵を握るのは米国である。トランプ氏の一段の尽力を期待したい。